天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「は?」

三人で立ったまま沈黙が続く。

「だからその、たぶん全部律の勘違い」

私は律を見上げて話す。

「勘違い…。今日のは?」

「あれは悪い虫がいたから俺が追っ払っただけ」

「丈慈と翠は兄妹で、キスしてない。妻一筋。悪い虫を追っ払った…勘違い…」

なんかブツブツ言っている。

「まぁ、あとは二人で話してくれ。とりあえず律の事は他言しないから。悪かった本当に。それじゃ。妹の事頼むな。変な事すんなよ」

そう言って丈慈はさっさと帰ってしまった。

「あー、あははは。なんか…ご、ごめんね?」

「お前の兄貴、シスコン?」

「まぁ、若干?」

「俺、試されてたんだろ?」

「それは良くわかんないけど…。でも律の事は
褒めてた珍しく」

「そうか…」

律はドサっと床に座って後ろに手をついた。


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