天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「飯は?」

「いや、まだですよ。ここに直行ですよ。なんか律怒ってるし」

律はそのまま顔を上げて天井を向いた。

「見ちゃいけないもの見たかと思ったわ」

「なにそれ」

私もスッと座る。

「不倫の次は、禁断の的な」

「本当無理」

「いや俺もさすがにお前不毛すぎね? ってなったわ」

「ヤバいねそれだったら」

「ああ。どうやったら諦めさせれんのか考えてた」

「え?」

「翠が可哀想すぎて」

そういう事か。

「ふふふ。ありがとう。大丈夫、全然そんなんじゃないから」

「ああ。どれ飯行こうか。腹減ったろ」

律は顔を戻すといつものように白い歯を見せた。

「うん!」

「あ、あとこれ。はい」

そう言って白い箱を渡された。

「え? これって…」

「イヤホン」

「買ってくれたの!?」

「いや、まぁ…困るかなって」

「めちゃくちゃ嬉しい! 今律の曲、片耳だけで聞いてたから」

「ククっ。そうか。んじゃそれで両耳で聴いてくれ」

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