天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「ありがとう」

私はもう一度お礼を言うと、律は優しく微笑んで私の頭をぽんと撫でて立ち上がった。

「なくすなよ」

「うん」

そして律の車に乗りこんだ。

「何食べたい?」

律に聞く。

「お好み焼きとかどう?」

「いいね!」

そして案内してお店に入った。

「秘書って、もしかして兄貴の?」

料理を待つ間、律が話しかけてきた。

「あ、うん。そうだよ」

「パリも出張で?」

「そう。そしたらたまたま律のピアノコンツェルトと日程が被ったから、丈慈連れて聴きに行ったの」

「そうだったのか」

「パリの時、よく私だってわかったね」

「まぁ。衝撃的だったしなお前の印象」

「いやこっちのセリフねそれ」

そう言って笑い合った。
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