ガラスドーム ~婚約破棄は雪原の上で~
「カレン。外に出て散歩でもしないかい?」
こんな吹雪の中を?
でも、殿下は何か考えておられるはず。
私は王子を信じて、一緒に馬車に乗った。
しばらくして降りた場所は、エレナ・ウェイツが死んだ崖の近くだった。
「すまない、エードリング公爵令嬢。君との婚約を破棄してほしい」
そして告げられた婚約破棄の言葉。
崖の近くで吹雪いている雪の間に、彼女を見た。
私にも見える。彼女の雪原の上で舞う姿を。
エレナは消えない。
それどころか彼のいや、私の瞳の中にいつまでも残っている。
彼は私のものになるって期待していたのに、そんなことありえなかった。
彼の心の中に彼女は永遠に刻み込まれてしまった。
桜散る春の日も、雪が舞う冬の日も。
あのガラスドームの中で、彼女は永遠に踊っている。
リングスフェールドの冬は早い。
春は一瞬で駆けていくというのに。
完