悪名高きロザリンドが英雄になったわけ
第14話 君に興味がある
足を挫いているせいでうまく泳げない。
体はだんだんと底へ沈んでいくのがわかった。
湖は暗く、そして冷たい。
私はここで終わってしまうの?
いいえ。まだ、まだここでは終われない。
まだ私には使命が残っているのに。
水面に溢れている光に向かって手を伸ばす。
すると、誰か。いや、ダース王子がこちらに泳いできて私の手を引っ張った。
彼は私を抱き寄せて、陸へ引き上げる。
私は咳き込んで湖の水を吐き出した。
「オークは!?」
王子は親指でクイっと指差す。オークたちは気絶しているようだった。
「マーガレット。そう! マーガレットは!」
「彼女は無事だよ。実習の先生が保護した。俺が走っている途中で照明弾が見えてね。まさかと思って駆けつけたんだ。フェードルス嬢はいたのに、君がいない。それで薙ぎ倒された木を頼りに進んでみたら、君とオークがいたってわけ」
ダース王子は脱ぎ捨てた上着を払って、私の肩にかける。
「助けてくださってありがとうございます。でももうマーガレットを気にかけるのはこれまでに」
「彼女は気にかけてない。君が心配できたんだ」
「なぜ? なぜ私に関わってくるのですか?」
私が尋ねると、彼は質問で返してくる。
「噂では君は、アンジェロ兄様のことが好きなんだよね。それなのに、兄上が気にかけているマーガレットを必死になって助けている。これはどういうことかな」
私は慎重に言葉を選ぶ。
「私は誰のことも好いてなどいません。私は自分がやりたいことをやっているだけ。それにこれはマーガレットを助けるためではなく、ただ単にマーガレットのいじめに巻き込まれただけですわ」
「そうかい。それは良かった」
「私の質問に答えていません。なぜ私に関わってくるのですか?」
ダース王子は素早く私を抱き上げた。
「ちょっと何するんですか!?」
「君に興味をもった」
「え……?」