悪名高きロザリンドが英雄になったわけ

 澄み渡った空色の瞳が私をじっと見つめる。
 私は恥ずかしくなって目を逸らした。

「あの、おろしてください」

「君は足を怪我している。歩けないだろう? さ、皆のところへ帰ろう」

 ダース王子は私を抱き抱えたまま、森を歩いていく。
 私は彼に尋ねた。

「あのオークを軽々と持ち上げるなんて。あれが殿下の能力なのですか?」

「そうさ。超怪力ってやつだね。他の兄上たちに比べたら地味だろ?」

 皇太子のアンジェロ様は雷。
 第二王子のカデオは治癒。
 2人の派手な能力を思い出して、あぁと呟いた。

「それにあまり強い能力じゃない。だから私は、兄上たちに負けないように剣術を頑張って磨いているんだ。こう見えても、兄弟の中では一番の剣術を誇っているんだよ。まぁ、アンジェロ兄様が雷を放ったりでもしたら、勝てるわけがないけどね」

 少し情けないような顔をしているダースに私は返した。

「それでもあなたは、通常の倍もあるオークを軽々と倒した。誇るべき能力です」

 私がそう言うと、彼は嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう。ロザリンド。そう言ってくれたのは、君が初めてだ」

 ***

 その後マーガレットと私は医務室に運ばれて、治療を受けた。
 ダース王子は医務室の入り口で腕を組んで様子を見ている。

「マーガレット! 大丈夫かい?」

 マーガレットのことを聞きつけたアンジェロ様がやってくる。彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「アンジェロ様!」

 私の治療は終わったことだし、私は2人の邪魔にならないように、医務室から出ようとした。

「ロザリンド」

 アンジェロ様に呼ばれて、私はすぐに振り返った。

「災難だったね。でも、君がいてくれて良かった。おかげでマーガレットが助かったんだから」

 マーガレットもお礼を言う。

「ありがとうございます。ロザリンド様」

「……何がありがとうよ!」

 私はマーガレットに近づき、そして彼女の頬を引っ叩いた。
 
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