~なぜなら私は、悪女ですから~国外追放された悪役令嬢は、過去に戻って罪滅ぼしをするつもりが、第3王子に溺愛されています

「サイガーダ……!」

 その名を聞くだけで周りの大臣たちは震え上がり、私は頭のてっぺんから血の気が引くのを感じた。

「そんなこと! お父様が黙っていませんわ!」

 いつだって私の味方になってくれたお父様。
 美しい赤い花だと褒めてくださったお父様。
 目に入れても痛くないとおっしゃってくれたお父様。
 お父様なら、絶対にこんなこと許すわけがない。
 
 アンジェロ様は呆れた顔をしながら、嘲笑した。

「それではマリーティム公に直接聞いてみようではないか! マリーティム公爵をここへ!」

 アンジェロ様がそう言うと、マリーティム公爵、私の最愛のお父様が玉座の間へやってきた。

「お父様!」

 お父様は私を一度も見ることなく、オデュロー王に跪く。

「この度の件におきましては私の躾がなっていなかったことによる罪。どうか娘を死罪にするなり、流刑にするなり好きにしてかまいません」
「お父様……?」

 お父様のあっさりとした返答にオデュロー王は驚く。

「いいのか? 将軍。唯一の愛娘ではないか」
「そうよ、お父様。お母様が早くに亡くなり、お父様には私しかいない。私にそう言っていたじゃない。そうでしょ? ねぇ」

 お父様の服の裾を握っていたが、うるさいハエを撒くように冷たく振り払われた。

「陛下。実のところ娘は、正妻の子ではありません」

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