悪名高きロザリンドが英雄になったわけ
あの後、マーガレットはアンジェロ様によって救出され、妄想令嬢のセレナ・アーガインは精神病院へ送り返された。アンジェロ様は匿名の手紙を書いた人物を一生懸命探しているようで、私にも話しかけてきた。
私は興味ない風を装って、アンジェロ様の腕に絡みつく。
「それよりもアンジェロ様。最近ここの近くに紅茶屋さんができたそうですわ。ご一緒しませんこと?」
「すまないロザリンド。そこへはマーガレットと行く約束になっているんだ」
アンジェロ様は私の手をゆっくり払うと、失礼と言って去っていった。
そんなの既に知っている。わざと茶化してみせたのだ。
校門の近くでマーガレットがアンジェロ様を待っている。
彼は彼女に手を振って、嬉しそうに走っていく。
2人の様子を羨ましく眺めた。
これでいいのだ。
このまま2人がくっつけば、婚約まで至ればそれで。
胸が締め付けられるように痛む。
未練がましいわね、ロザリンド。
愛しのアンジェロ様。
私の初恋の人。
私の光そのものだった人。
でも諦めます、あなたのことを。
あなたの幸せを私は望みます。
さようなら。
アンジェロ様。
「アンジェロ兄様をそんなに見るなんて。妬いちゃうな」
「カデオ様……!」