~なぜなら私は、悪女ですから~国外追放された悪役令嬢は、過去に戻って罪滅ぼしをするつもりが、第3王子に溺愛されています

第3話 サイガーダへ


 牢獄に差し込む月明かりが唯一の光だった。
 部屋の隅で膝を抱えて項垂れていると、牢の外からカデオ王子がやってきた。

 金色のセミロングの髪を一つに結び、あごはスッと鋭く、目はやや垂れている。アンジェロ様のもつサファイアの瞳とは違う瑠璃色の瞳には深みがあり、気をつけていないと引き込まれてしまいそうになる。

「可哀想なレディ・ロザリンド。誰も面会に来てくれないなんて」

「聖人君主ともあろうカデオ様が一体ここへ何のご用なの? 私を助けてくださるとか?」

 カデオ様は二人だけにするように衛兵たちに目配せをする。それから彼は私に近づくように手招きをした。
 私がおそるおそる近づくと、カデオ様は私の腕を引っ張り耳元で囁く。

「ロザリンド。君を助けてくれる人はいない。これは全て君の悪行から招いたことだ。君のせいでもあるんだよ。だからせめて、私のための、大業を成すための生贄になってくれ」

 ここで私は、カデオ様の策略に巻き込まれたのだと確信した。

「誰か、誰かいないの! この人よ! カデオ王子がマーガレットを殺した! 犯人は彼よ! あの三人と騎士をうまく抱き込んで私を陥れた。誰か!!」

 カデオ様は私から離れるとやれやれという風に肩をすくめた。

「ご乱心のようだ。無理もない。君は孤独にあの紅蓮地獄へ連行されるんだ。いや、もともと独りぼっちだったか」
「カデオ! 覚えていなさい! 必ずあなたに復讐するわ」
「さようなら。ロザリンド。哀れな赤い花」

 カデオはひらひらと右手を振って去っていく。私は彼の背中を目に焼き付けた。
 
 許さない。
 許さない。
 私を裏切った者も。
 陥れた者も全て地獄へ送ってやるんだから!
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