~なぜなら私は、悪女ですから~国外追放された悪役令嬢は、過去に戻って罪滅ぼしをするつもりが、第3王子に溺愛されています

 サイガーダ。人が住むところではないと言われるほどの極寒の地故に、紅蓮地獄と例えられた国。
 その例えの通り、辺りは銀世界が広がっており、吹雪いていない時はない。

 その森の奥の塔で私は幽閉された。暖炉に火がついているにも関わらず、あまりの寒さに身体中霜焼けができ、凍死するのではと寝るのが怖かった。
 
 塔には管理人がいて、私の世話係にもなっている。彼女の名前はアリッサ。昔、私の屋敷で皿洗いをしていたそうで、他人のお金をくすねたらしく、このサイガーダへ送られたそうだ。

 年齢は四十代くらいで、顔はやつれて痩せ細っており、今にも倒れそうな体をしていた。この塔に長いこと暮らしていることが奇跡に近いくらいだ。こんなところにいたら心まで凍って荒んでしまうに決まっている。

 だが不思議なことに、彼女の目はサイガーダの夜空に輝く星々よりも明るく輝いていた。そしてどこにそんな元気があるのかわからないが、明るく積極的に私のお世話をしてくれた。

 サイガーダに送られて絶望していた私は、怒りのままに部屋中の物を壊していった。いつもは鞭で誰かを叩くところだが、なぜかアリッサに手を出すことができなかった。

 そして彼女は黙って壊れたものを掃除し、私の背中をさする。冷たいはずの手なのに、どこか温かみを感じた。

 会話をする相手はもちろん彼女しかおらず、私は自分が嵌められてここに連れてこられたんだとアリッサに説明した。

 話の間、彼女は黙って聞いており、時々目に涙を溜めていた。

「誰も私を助けてくれなかった。誰も信じてくれなかったのよ。あなたもどうせ、妄言だと思って心の中で笑ってるのでしょう?」
「ロザリンド様。私はあなたを信じます」

 彼女は私の手をとって、温めるようにさする。

「触らないでよ。私は公爵家の娘よ。正妻の子ではないけれど……」

 
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