国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改稿版~

実習

 夏休みが終わって、私達は二年生になった。Sクラスには私以外に女の子がいなかったし、対抗意識も強かったので、クラスでは打ち解けて話せるような人はいなかった。Aクラス以下の子達はSクラスの生徒を恐れているのか、私達に近づこうとすらしない。学園生活に慣れてきた頃、担任のガルシア先生は私の所へ来て言った。

「シャルロットさん、私の弟子にならない?」

「え?」

「今すぐって訳じゃないの・・・・・・私も後継を育てなきゃいけないし。個人的見解だけど、『あなたの魔力量なら研究者になってもいいんじゃないかな』って、思ったの。卒業まででいいから考えておいて」

「はい・・・・・・ありがとうございます」

 思わぬ申し出に嬉しい気持ち半分、心のどこかで『家に帰りたい』とも思っていた。私は胸の奥にわだかまりを抱えながらも、野外実習の集合場所へ向かったのだった。


*****


 野外実習とは言っても、同じ敷地内にある森の中で行われる。今日は精霊を召喚して行う『強化魔法』の実習の日だ。

「えー、皆さん。この森に精霊はたくさんいます。発動条件は異なりますが、手を貸して貰えれば、普段使う魔術の威力が10倍から100倍まで膨れ上がります。また、精霊達は気まぐれです。手を貸して貰えなかったからといって、怒ったりしないように」

 晴れている日は、「普段より力を貸してもらいやすい」と言っていたが、精霊達は気まぐれだ。力加減は的当てより更に難しかった。

「火の精霊よ、あまねく大地を照らし私達を導き給え───ファイアウォール!!」

 詠唱してから放った私の魔術は、威力が通常の100倍まで膨れ上がっていた。的は全て破壊され、地面は抉られており、目の前にあった木々は倒されていた。

「シャルロットさん、やり過ぎです」

「す、すみません」

 私は全てを焼き尽くしそうな、自分が放った炎の球に驚いていた。実習中に、負傷者が出なくて本当に良かったと思う。


< 12 / 70 >

この作品をシェア

pagetop