国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改訂版~

ギルドからの手紙

 村を出ると、1年半前の記憶を辿りながら、モルトローズ伯爵家のあるセスノット王国を目指して歩き始めた。初夏の日差しは柔らかく、このまま歩いて行けば普通に着くような気がしていた。

 私は1つ目の街へ辿り着くと、魔術師の身分証を見せて街の中へ入った。はじめのうちに休んでおかないと、国に辿り着く前にバテてしまうだろう。

 私が宿屋へ入って身分証を見せると、受付の人は驚きつつも部屋を案内してくれた。何に対する驚きなのか、はたまた恐怖なのか、分からないまま私は鍵を受け取ると部屋の中へ入った。何もする気が起きなくてベッドに腰掛けていると、ドアをノックする音が聞こえた。

「はい」

「ギルドからSランクの魔術師に対して招集要請の手紙が来ております。こちらへ置いておきますので、後でお読みください」

 受付の人だった。彼女はそれだけ言うと、ドアを開けずに下の隙間から手紙を差し入れて去って行った。

(ああ、そうか。この街から自国の領土なんだっけ。後で禍根を残すからギルドの仕事はなるべく受けなさいって、先生は言ってたけど・・・・・・)

 ドアの隙間から差し込まれた手紙を拾うと、私は封を開けた。簡単な挨拶文と、Sランクの魔術師への召集要請内容だった。

 学園でSクラスの授業を受けた者は、ギルドでのランクは自動的にSランクになってしまう。ギルドの試験を受けたり、実力でSランクになった訳では無いため、やっかみを言う人もギルド内には多いと聞いていた。

(Sランクなんて、なりたくてなった訳じゃないんだけどなぁ)

 行く行かないにしても、一度この街のギルド長へ挨拶に行かなければならないようだった。


*****


 宿から歩いて5分の場所にあった冒険者ギルドはドアを開けて中へ入ると、すぐに目の前に受付があった。相談などは個別のブースで行っているらしく、むさ苦しいイメージとは対照的の、清潔感のあるギルドだった。

「身分証をお願いします」

「はい」

 私が魔術師の身分証を見せると、受付の子は明らかに顔面蒼白になっていた。

「まっ、魔術師様ですねっ・・・・・・しかもSランク!! 今日は、どういったご用件でしょうか?」

(そう言えば、学園に入るとき学園長が「魔術師は忌み嫌われている」みたいなことを言ってたな・・・・・・)

「旅の途中で、召集要請の手紙を受け取りまして、こちらへ伺った次第なのですが・・・・・・」

 私が宿屋に送られてきた手紙を渡すと、受付の子は更に青ざめていた。

「とっ、特別召集の!! 少しお待ちください。ギルド長を呼んできます」

 『何だか大事になってしまったな』と思いつつも、私は受付の近くにあるベンチに腰掛けて、ギルド長という人物を待つことにした。


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