国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改稿版~
再会
馬車に乗り継いで、私は久しぶりに自宅である伯爵邸へ戻ってきていた。ここを泣きながら家を出た日が、たった2年前だというのに、すごく昔のことのように感じていた。いや、実際には38年前の話なのだが・・・・・・。
私は知っている顔の人がいるのだろうかと、屋敷の前で入れずに建物を見上げていた。国外追放が取り消されて、自宅へ戻ってきただけなのに中へ入るのが怖い。
「失礼ですが、シャルロットお嬢様でいらっしゃいますか?」
「はい」
私は手に握りしめていた執事から貰った手紙を見せた。侍従と思われる格好をした男性は、手紙を受け取ると、私に対し恭しくお辞儀をした。
「わたくし、先代の執事シモンから指名を受けまして、今年からこちらで仕えることになりました、セバスと申します」
(もしかして、セバスチャン?!)
前世で私がよく読んでいた学園ものの小説や漫画には、必ずと言っていいほど執事が出てきていた。その名前が、だいたい決まって『セバスチャン』なのだ。私は初老の白髪混じりのイケオジに、勝手に親近感を抱いていた。
「・・・・・・」
「とりあえず中へ・・・・・・奥様がお待ちです」
「はい」
屋敷の中に入ると、働いていたメイドや侍従が仰天したようにロビーや、廊下を駆け回っていた。
「奥様!! 奥様!! お嬢様が!!」
「大変だ~シャルロットお嬢様が、ご帰還です」
若いメイドが慌てすぎて、1人で廊下を転げ回っていた。
「お気になさらず。どうぞこちらへ」
そう言うと、セバスチャンは階段を駆け上がった。私が全力疾走する形になってしまったが、何とかお母様の寝室の前へ辿り着くことが出来た。
(寝室?・・・・・・手紙も本人からじゃなかったみたいだし、お母様はやはり病気なの?)
ドキドキしながらドアを開けると、天蓋付きベッドの傍らには侍医が座っていた。きっと、つきっきりで看病をしていたのだろう。私の存在に気がつくと、そっと立ち上がり私に椅子を譲った。
(・・・・・・もう長くはないのだろうか?)
「シャルロット? シャルロットなのね?」
母は目が見えないのか、頭上を見つめたまま微笑んでいた。
「お母様・・・・・・」
「最期に貴方に会えて良かったわ・・・・・・あの人は先に逝ってしまったけど」
「お母様、私・・・・・・」
「元気そうで・・・・・・良かったわ」
「私、あなたに伝え忘れたことがあるの」
そう言うと、お母様は空中に手を差し伸べていた。私はそれを掴むと、必死に頷いた。
「あなたを愛してるわ。世界中の誰よりも。時間が掛かってしまったけれど、あなたの無罪も旦那様が証明してくれたのよ。戻ってきていいの。ずっと家にいていいのよ」
「ありがとうございます」
私には魔術がある・・・・・・伯爵邸で暮らすつもりは無かったが、ここは頷いておいた方がいいだろう。
「安心して。あなたには・・・・・・」
そこまで言うと、お母様は咳き込んでしまった。
「今日は、ここまでに・・・・・・」
侍医に止められて、私は席を立った。席を立った事が分かったのか、お母様は顔を顰めながら言った。
「明日も来てちょうだいね」
「はい、お母様」
執事のセバスチャンに連れられて、私は部屋を出た。以前に使っていた部屋へ案内されると、ベッドの端に座ったのだった。
私は知っている顔の人がいるのだろうかと、屋敷の前で入れずに建物を見上げていた。国外追放が取り消されて、自宅へ戻ってきただけなのに中へ入るのが怖い。
「失礼ですが、シャルロットお嬢様でいらっしゃいますか?」
「はい」
私は手に握りしめていた執事から貰った手紙を見せた。侍従と思われる格好をした男性は、手紙を受け取ると、私に対し恭しくお辞儀をした。
「わたくし、先代の執事シモンから指名を受けまして、今年からこちらで仕えることになりました、セバスと申します」
(もしかして、セバスチャン?!)
前世で私がよく読んでいた学園ものの小説や漫画には、必ずと言っていいほど執事が出てきていた。その名前が、だいたい決まって『セバスチャン』なのだ。私は初老の白髪混じりのイケオジに、勝手に親近感を抱いていた。
「・・・・・・」
「とりあえず中へ・・・・・・奥様がお待ちです」
「はい」
屋敷の中に入ると、働いていたメイドや侍従が仰天したようにロビーや、廊下を駆け回っていた。
「奥様!! 奥様!! お嬢様が!!」
「大変だ~シャルロットお嬢様が、ご帰還です」
若いメイドが慌てすぎて、1人で廊下を転げ回っていた。
「お気になさらず。どうぞこちらへ」
そう言うと、セバスチャンは階段を駆け上がった。私が全力疾走する形になってしまったが、何とかお母様の寝室の前へ辿り着くことが出来た。
(寝室?・・・・・・手紙も本人からじゃなかったみたいだし、お母様はやはり病気なの?)
ドキドキしながらドアを開けると、天蓋付きベッドの傍らには侍医が座っていた。きっと、つきっきりで看病をしていたのだろう。私の存在に気がつくと、そっと立ち上がり私に椅子を譲った。
(・・・・・・もう長くはないのだろうか?)
「シャルロット? シャルロットなのね?」
母は目が見えないのか、頭上を見つめたまま微笑んでいた。
「お母様・・・・・・」
「最期に貴方に会えて良かったわ・・・・・・あの人は先に逝ってしまったけど」
「お母様、私・・・・・・」
「元気そうで・・・・・・良かったわ」
「私、あなたに伝え忘れたことがあるの」
そう言うと、お母様は空中に手を差し伸べていた。私はそれを掴むと、必死に頷いた。
「あなたを愛してるわ。世界中の誰よりも。時間が掛かってしまったけれど、あなたの無罪も旦那様が証明してくれたのよ。戻ってきていいの。ずっと家にいていいのよ」
「ありがとうございます」
私には魔術がある・・・・・・伯爵邸で暮らすつもりは無かったが、ここは頷いておいた方がいいだろう。
「安心して。あなたには・・・・・・」
そこまで言うと、お母様は咳き込んでしまった。
「今日は、ここまでに・・・・・・」
侍医に止められて、私は席を立った。席を立った事が分かったのか、お母様は顔を顰めながら言った。
「明日も来てちょうだいね」
「はい、お母様」
執事のセバスチャンに連れられて、私は部屋を出た。以前に使っていた部屋へ案内されると、ベッドの端に座ったのだった。