国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改訂版~

宮廷魔術師

「なんだ、聞いてなかったのか?」

「はい」

「私では不服か?」

「不服といいますか、私は一度、伯爵家・・・・・・いえ、侯爵家を出た身分です。とても、王妃が務まるような身分ではありません。それに、私は魔術師として活路を見出しているのです。そんな人間は、王妃の器に収まらないでしょう。それに・・・・・・」

「なんだ、申してみよ」

「国王は20才と聞いておりましたので・・・・・・」

「私は20才だ」

「え?」

「私の年齢は20才だと言っている。私が12才の時に東の魔術師に呪いを掛けられたのだ。成長が止まる呪いの魔術をな・・・・・・」

「・・・・・・」

(東の魔術師? 聞いたことないわね)

「それで、その・・・・・・婚約という話に?」

「いや、それは亡きモルトローズ侯爵の遺言でな。無実の罪で国外追放された娘を幸せに導いてやって欲しいと・・・・・・もともとが、次期国王の婚約者だったのだ。それ以下の人間では、(あがな)うこともままならないだろう?」

 国王陛下の言い方は、『身分の高い者と結婚することが、女性としての最大の栄誉』だと思っているような口ぶりだった。国王の妻なんて冗談じゃない。私は田舎で普通の暮らしがしたいのだ。

「償いは結構です。恐れながら申し上げます。陛下が罪の意識を感じる必要はないでしょう」

「そうかもしれぬな・・・・・・しかし、償うつもりはあるし、これは議会での決定事項だ。それに、隣国では平民が王妃になっているのだぞ。魔術師が王妃になれないというのは、いい訳にしかならないと思うが」

「世論の問題です。陛下の名に傷がつきます」

「暴虐の魔女だったか。面白い二つ名だよな・・・・・・国民栄誉賞を与えるほどの活躍をしたというのに、世論はよく分からぬ。では、そなたを宮廷魔術師に任命しよう。それだったら構わないか? スタンピードの褒賞の件もあるし」

(何だか分からないけど、婚約じゃないなら宮廷魔術師になれってこと?! それで許されるなら、とりあえず宮廷魔術師になって、隙を見て逃げ出せばいいわ)

「慎んでお受け致します」

「宮廷魔術師になって、ついでに私との婚約も考えてみてほしい」

「・・・・・・」

それが私の『宮廷魔術師』としての、生活の始まりだった。


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