国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改稿版~

魔術師団長?!

 謁見の日から数日たったある日、陛下から呼び出された。

『宮廷魔術師の仕事について話がある。執務室へ来るように』

 そんな内容の手紙を受け取った私は『陛下の執務室ってどこよ』と思いながらも、侯爵家の馬車で城へ向かった。侯爵家に迷惑がかかったり、不敬罪になっても困るので、無視することも出来ない。

 今回もセバスチャンが、私の後をついて来ていた。私のお目付役といったところだろうか。執事のセバスチャンが、陛下の執務室前までエスコートしてくれる。

「ありがとう、セバスチャン」

「セバスでございます」

「・・・・・・ごめんなさい」

「いいえ。誰しも間違えることがございます。失敗を恐れる必要はございません」

(セバスチャン、これからの話し合いのことについて、言っているのかしら?)

「セバス、貴方も一緒に部屋の中へ入ってくれる?」

「仰せのままに」

 セバスチャンは再び一礼をすると、部屋のドアをノックをしてから中へ入った。

「ごきげんよう、陛下」

「あっ、もうこんな時間か・・・・・・」

「陛下、お忙しいようでしたら、後日改めて参ります」

(・・・・・・そして、そのままソレイユ村へ帰りたい)

「あと3分で終わるから、ソファーに掛けて待っててくれ」

「承知致しました」

 私は空いているソファーへ腰掛けると、セバスチャンが椅子の後ろへ立った。陛下の侍従と思われる男性が、私に気を遣ったのか紅茶を出していた。

 陛下は書類を片付けると、先ほど紅茶を出してくれた侍従に書類を手渡してから、こちらへやって来た。

「待たせて、すまない」

「いえ、構いません」

「それで、先日言っていた宮廷魔術師の件についてだが・・・・・・」

 やっぱり空きがないから無理だという話だろうか? それとも、他の魔術師が『暴虐の魔女』と一緒に仕事をしたくないと言い出したのだろうか・・・・・・そう思って顔を上げると、そこには真剣な表情をした陛下がいた。仕事ぶりや話の内容、真剣な表情は『国王陛下そのもの』だった・・・・・・しかしながら、見た目は小学生である。ちぐはぐな印象に何とも言えずにいた私の様子を見て、陛下は苦笑していた。

「何でしょう?」

 私は何を言われても大丈夫なように、腹の底に力を込めて覚悟を決めた。

「宮廷魔術師が所属する魔術師団の団長が、先日引退してね・・・・・・君にお願いしたいと思っている」

「団長?! 私がですか?」

「ああ」

 私は『この人は一体何がしたいんだろう』と思いながらも、陛下の青い瞳を見つめていた。


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