国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改訂版~

城での生活

 昨日は、あれから侯爵邸へ帰って、弟であるモルトローズ侯爵へ報告をした。宮廷魔術師になったこと、陛下の専属護衛になり、城で暮らすことになったことを伝えると弟はすごく喜んでいた。

「姉上!! すごい出世じゃないですか!! 応援してますよ」

 傍から見れば、出世なのかもしれないが、そうではない。私からしてみれば婚約破棄をしたことへの『穴埋め』なのだ。そもそも『穴埋め』自体もおかしい気がしていたが、陛下の顔をみると、どうしても『この子の力になってあげなくちゃ』と思ってしまうのだ。

 (『あざとい』って、きっと、こういうことを言うんだわ・・・・・・全く謀られたもんよ)

 心の中で悪態をつきながらも、次の日の朝、セバスチャンへの挨拶を済ませると、少ない荷物を持って侯爵邸の馬車を借り、城へ引っ越した。

「シャルロット様・・・・・・本当に、いつでも戻ってきてください。それが、大奥様の望みでしたから」

「ありがとう。セバス」

 私は馬車の窓から顔を出すと、セバスチャンの・・・・・・いや、セバスの顔が見えなくなるまで、手を振っていたのだった。


*****


 城へ着くと、一人で執務室へ向かったが、陛下は視察へ出かけていて留守だった。代わりに執務室の前には、宮廷魔術師の『アンドレ』という男性が待っていた。騎士隊の白い制服を着て、赤い髪を無造作に振り回している様は、魔術師には見えなかった。

「陛下から、この部屋の鍵と契約書を預かってます」

 私は新しい契約書を確認したが、契約内容の5条は直っていたものの、最後の一文に『特別な場合を除き陛下の一存に同意する』と書き足されていた。陛下はどうしても、私を自分の牽制下へ置きたいようだ。私が半眼で契約書を眺めていると、隣でアンドレが苦笑していた。

「陛下とよく話し合った方がいいですよ」

「ええ・・・・・・そうしてみるわ」

「陛下は午後にお戻りになります。それまでの時間、久しぶりにユリア王女に会ってみてはどうだろうかと仰っていました。その方が、シャルロット様の知りたかった真実が分かるのではないかと、陛下はそう思っているご様子でしたが・・・・・・いかがなさいますか?」

「アンドレ様、私は新入りの宮廷魔術師です。敬語は止めてください。ユリア様には会ってみます。呪いを解く手掛かりが、何かあるかもしれませんし・・・・・・」

「えっ、呪いですか?」

 アンドレの疑問はもっともだ。呪いの原因は、誰もが陛下自身にあると思っている・・・・・・しかし小説では、呪いに掛けられた王子と王女を魔術師が救うのだ。王女が今も呪いに掛かっているのではないか、そしてそれが原因で陛下にも呪いが掛けられたのではないかと、私は疑っていた。


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