国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改稿版~
離宮
ユリア王女が生活している離宮は、城からそう遠くはなかった。中庭を横切って50メートルほど歩いて行くと、離宮の入り口が見えてきた。入り口に立っている見張りの兵士にアンドレが挨拶をすると、顔パスで中へと入っていく。私も彼について中へ入ると、ユリア王女は中庭で愛犬と戯れていた。
「ユリア殿下、お久しぶりです」
「あら? アンドレ、来てたのね」
私が「お知り合いだったのですね」と言うと、「ユリア殿下は私の伯母です」と言っていた。ということは、アンドレも王族なのか・・・・・・そう思ったら、自然と胡乱げな目つきをしてしまっていたらしく、「母が公爵家に嫁いだので私は王族ではありませんよ」と、やんわり指摘されてしまっていた。
「ユリア殿下は、よしてちょうだい。私は、罪を犯して幽閉されているのよ」
ユリア様は、お元気だった。儚げな少女のような見た目は変わらないまま、そのまま年を取ったような印象だった。笑った表情に昔の面影を感じて、勝手に懐かしくなってしまう。
「幽閉されているとは言いながらも、変装して孤児院へ慰問に行ったり、町で困ったことがないか聞いて回っているでしょう?」
「贖罪の気持ちからよ・・・・・・私は昔、罪の無い周りの令嬢達が国外追放されるのを黙認していたわ。言うとおりにしなければ、父と母を殺すと脅されていたの。でも、そんな話に耳を傾けるべきでは無かった。王族として恥じるべき行為よ・・・・・・あら、あなたは?」
「お久しぶりです。ユリア様」
私が淑女の礼をすると、彼女は丸い瞳を更に丸くして、目を瞠っていた。
「まさか・・・・・・シャルロット?!」
「はい」
「嘘・・・・・・生きて・・・・・・生きていてくれて、ありがとう」
彼女は私の手を掴むと、目に涙を溜めながら俯いていた。
*****
「ごめんなさいね、みっともないところを見せてしまって」
「いえ・・・・・・こちらこそ、驚かせてしまってすみません」
私は、2年間『魔術学園』に通っていたこと、魔術学園の時の流れは遅くて、まだ16才であることを話した。彼女にとっては遠い記憶だったかもしれないが、私にとってはたった2年前の出来事だ。彼女の表情は苦悶に満ちていた。
「そう。それで、あの子はあんな事を・・・・・・」
「ユリア殿下、私はユリア殿下を恨んでいませんし、酷いことをされたとも思っていません。陛下に恩赦を願いましたが、叶いませんでした」
「シャルロット、あなたは被害者なんだから、もっと怒ってもいいのよ・・・・・・それに、恩赦なんて言われても困るわ。城へ戻って、また同じ罪を犯さないか、同じ事をしないかと言われても分からないの。あの時は怖くて声も出なかった。若かったから、仕方がないとずっと思っていたけれど・・・・・・何かが違う気がするの。玉座の間に行くと、緊張して何かこう・・・・・・上手く喋れなくなってしまうというか」
「今のお話を聞いて確信しました。ユリア様・・・・・・ユリア様は、呪いの魔術を掛けられている可能性があると思います」
「呪いの魔術??」
「私は魔術学園で魔術を学ぶ内に、ユリア殿下は何か呪いの魔術を掛けられたのではないかと思いました。城のどこかに魔術を仕掛けられたのであれば、宮廷魔術師が気がつくはずです。だから、バレないようにこっそりと料理に何かを混ぜて入れた」
私は学園で学ぶ内に、気がついたと言ったが、本当は小説の内容を思い出しただけだった。呪いの魔術を打開したのは、私が国外追放された後に、ジルベール元国王が婚約した、聖女だったはず。けれど、隣国から第5王女が嫁いできたと言うし、ジルベール様も亡くなってしまっている。今となっては、薬を用意した犯人を見つけることは難しいだろう。犯人は、真実が完全に闇に葬り去られるのを待っているに違いない。
「まさか、私のメイドの誰かが?」
「分かりません。今となっては、調べようもありませんから・・・・・・」
「ユリア殿下、お久しぶりです」
「あら? アンドレ、来てたのね」
私が「お知り合いだったのですね」と言うと、「ユリア殿下は私の伯母です」と言っていた。ということは、アンドレも王族なのか・・・・・・そう思ったら、自然と胡乱げな目つきをしてしまっていたらしく、「母が公爵家に嫁いだので私は王族ではありませんよ」と、やんわり指摘されてしまっていた。
「ユリア殿下は、よしてちょうだい。私は、罪を犯して幽閉されているのよ」
ユリア様は、お元気だった。儚げな少女のような見た目は変わらないまま、そのまま年を取ったような印象だった。笑った表情に昔の面影を感じて、勝手に懐かしくなってしまう。
「幽閉されているとは言いながらも、変装して孤児院へ慰問に行ったり、町で困ったことがないか聞いて回っているでしょう?」
「贖罪の気持ちからよ・・・・・・私は昔、罪の無い周りの令嬢達が国外追放されるのを黙認していたわ。言うとおりにしなければ、父と母を殺すと脅されていたの。でも、そんな話に耳を傾けるべきでは無かった。王族として恥じるべき行為よ・・・・・・あら、あなたは?」
「お久しぶりです。ユリア様」
私が淑女の礼をすると、彼女は丸い瞳を更に丸くして、目を瞠っていた。
「まさか・・・・・・シャルロット?!」
「はい」
「嘘・・・・・・生きて・・・・・・生きていてくれて、ありがとう」
彼女は私の手を掴むと、目に涙を溜めながら俯いていた。
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「ごめんなさいね、みっともないところを見せてしまって」
「いえ・・・・・・こちらこそ、驚かせてしまってすみません」
私は、2年間『魔術学園』に通っていたこと、魔術学園の時の流れは遅くて、まだ16才であることを話した。彼女にとっては遠い記憶だったかもしれないが、私にとってはたった2年前の出来事だ。彼女の表情は苦悶に満ちていた。
「そう。それで、あの子はあんな事を・・・・・・」
「ユリア殿下、私はユリア殿下を恨んでいませんし、酷いことをされたとも思っていません。陛下に恩赦を願いましたが、叶いませんでした」
「シャルロット、あなたは被害者なんだから、もっと怒ってもいいのよ・・・・・・それに、恩赦なんて言われても困るわ。城へ戻って、また同じ罪を犯さないか、同じ事をしないかと言われても分からないの。あの時は怖くて声も出なかった。若かったから、仕方がないとずっと思っていたけれど・・・・・・何かが違う気がするの。玉座の間に行くと、緊張して何かこう・・・・・・上手く喋れなくなってしまうというか」
「今のお話を聞いて確信しました。ユリア様・・・・・・ユリア様は、呪いの魔術を掛けられている可能性があると思います」
「呪いの魔術??」
「私は魔術学園で魔術を学ぶ内に、ユリア殿下は何か呪いの魔術を掛けられたのではないかと思いました。城のどこかに魔術を仕掛けられたのであれば、宮廷魔術師が気がつくはずです。だから、バレないようにこっそりと料理に何かを混ぜて入れた」
私は学園で学ぶ内に、気がついたと言ったが、本当は小説の内容を思い出しただけだった。呪いの魔術を打開したのは、私が国外追放された後に、ジルベール元国王が婚約した、聖女だったはず。けれど、隣国から第5王女が嫁いできたと言うし、ジルベール様も亡くなってしまっている。今となっては、薬を用意した犯人を見つけることは難しいだろう。犯人は、真実が完全に闇に葬り去られるのを待っているに違いない。
「まさか、私のメイドの誰かが?」
「分かりません。今となっては、調べようもありませんから・・・・・・」