国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改訂版~

好きになれそうな人

「陛下、婚約破棄の誓約書をいただきます」

 私は心ここにあらずの陛下を残して、書類を受け取り、部屋へ戻ろうとした。

「待て。国王に真実の愛が見つけられると思うのか?」

「陛下。私は常々、人は見た目で判断してはいけないと思っておりました・・・・・・今でも、その考えは変わりません。人は見た目ではありません。中身です!!」

「いや、だから・・・・・・私の場合、見た目以前の問題だと思うんだが・・・・・・」

「陛下は大変かわいらしく・・・・・・じゃなくて、『母性本能をくすぐる方だな』と、思っています」

「シャルロット自身が、そう感じるのか?」

「え・・・・・・はい」

 陛下は私の返答を聞くと、持って帰ろうとしていた婚約破棄の誓約書を、私の手元から奪い去り、ビリビリに破いていた。

「シャルロット、連帯責任という言葉を知っているか?」

「・・・・・・ええ。意味は存じております」

「生徒の事を思って、私に呪いを掛けた先生に一番の責任はあると思う。けれど、気がつかなかった生徒も生徒じゃないかな?」

「え?」

「先生を止められなかった生徒に、協力する義務が、少しはあるんじゃないかな?」

「待ってください。確かに解呪法を見つけるとは言いました。ですが、婚約は別問題です」

「そう思うなら、協力してほしい。婚約破棄の誓約書は後で書き直すよ」

 陛下はそう言うと、私室へ戻っていた。破られた誓約書をしばらく眺めていたが、拾うことも出来ずに顔を上げると、そこにはアンドレが立っていた。

「アンドレ様・・・・・・私には、陛下のお考えが分かりません。なぜ婚約した後、婚約破棄して、また婚約すると言ったのでしょう?」

「1つには、議会で国王に婚約者がいないこと自体が問題となっております。王族しきたりで、国王になる人物は、『20才までに婚約者を作らなけらばならない』というものがあります。迷信ですが、20才までに婚約者を作らないと国が滅びるといった言い伝えもあります。まあ、おそらく眉唾物でしょうが・・・・・・陛下も慣例に従いたかったのでしょう」

「他には?」

「もう1つの理由は、陛下がシャルロット様を気に入っているのだと思われます。シャルロット様以外に、好きになれそうな方がいなかった。だから、婚約破棄を取り消したのではないでしょうか?」

「・・・・・・へ?」

 突拍子もない話に、間抜け面をしてしまった自覚はある。アンドレの言葉には思い当たる節があった。陛下の態度は、好きな子にどう接していいのか分からずに、ついイジめてしまうような態度である。言われてみれば、陛下の周りに、若い女性はいない───国王という立場から考えれば、当然の事なのかもしれないが、確かに出会いが無ければ、好きになれそうな人にも出会えないだろう。

「アンドレ様・・・・・・私、いい事を思いつきましたわ」

 ニンマリと笑う私に、「何だか、嫌な予感しかしません」と、アンドレは言ったのだった。


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