国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改訂版~

結界の張り直し

「先生・・・・・・」

「シャルロット?」

「学園にいる間は、時の流れが変わりますよね? あれは、一体どういう仕組みだったんですか? それから・・・・・・学園にいる間、私は背が伸びませんでした。他の生徒も同じです。魔術は身につきましたが、身長は伸びなかった。一体、どういうことなのでしょうか?」

 ガルシア先生は自身の髪を掻きむしるような仕草をすると、真面目な顔つきになって言った。

「学園に向かいながらでも構わないか? どういう状況か分からないし、一刻を争う事態になっていないとも、限らない」

「分かりました。先を急ぎましょう」

 小屋の外には、小さな倉庫があった。ガルシア先生は、そこから木の板をつなぎ合わせて作った『ソリ』を取り出すと、その上に乗った。

「シャルロット、乗って!!」

 ガルシア先生は、ソリの上に立つと私を手招きした。

「乗りました」

「それじゃ、しっかり掴まってて」

「なっ・・・・・・」

 先生は、ソリに乗ってあり得ないスピードで走り出した。私が先生にしがみつく様にして掴まっている一方で、先生は豪快に笑いながら走り続けていた。

「先生、学園には何があるんですか?」

「何もない」

「でも、今、一刻を争う事態だって・・・・・・」

「学園には不思議が7つあるんだ。その内の1つが結界・・・・・・これは、他の平行世界と繋がっていると言われている。学園内では時の流れが遅くなり、著しく身体の成長が遅くなる傾向にある」

「だから学園長も見た目が若いのに、200才だったんですね」

「学園長は少し違う。他の魔術師に退行の呪いを掛けられたんだ。今は魔力制御で退行するのを食い止めているが、結界石の影響でどうなるかは分からないな・・・・・・結界装置の維持には、妖精王の力を借りて学園の生徒達から微量の魔力を吸い上げている。けれど、妖精王が眠りについている今、結界の再起動は難しいだろうな。今は学園で何が起こるか、全く予想出来ない状態なんだ」

「では、学園では・・・・・・」

「普通の時が流れている。どうやら他の世界との境界線から圧縮された魔力が放出されて、フォース国へ打ち込まれたみたいなんだ。フォース国の兵士が国境付近に集まってきているみたいなんだが、危ないと思う」

「危ないとは?」

「いつ、また同じ様なことが起きるか、分からない。結界の張り直しも、妖精王が目覚めるまで、何も出来ないしな」

「そうなんですね」

「シャルロット、飛ばすぞ」

 急に早く走り始めたソリのスピードに、私は立っていられずに、再び先生の腰にしがみついた。


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