国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改稿版~

次元の歪み

 応接室から外へ出て結界の見える位置まで来ると、ソリに乗ったガルシア先生が、ものすごい勢いでこちらへやって来くのが見えて驚いた。

「そこまでだ!! シャルロットから離れてもらおうか」

「お前は・・・・・・あの時の魔術師」

「先生!! 陛下は、フォース国とキルア国の仲裁に来てくださったんです」

「仲裁? シャルロットを口説きに来たのではないのか?」

「ガルシア先生、何を言ってるんですか? 陛下が私の事を、本当に好きな訳ないじゃないですか? 真実の愛だなんて言われても・・・・・・簡単には信じられません。国王としての義務を果たそうとしているだけの様に思えてならないのです」

「「え?」」

「だって、そうでしょう? 婚約者だから他国まで追いかけてきた。違いますか?」

「「違うだろう」でしょ」

「え?」

 今度は私が首を傾げる番だった。マルクス陛下が、国王として北の端にある国境まで追いかけてきたのは、義務を果たす為では無かったのか。

 キュィィィィィン―――

 私が考えに耽っていると、次元の歪みから魔力塊が収束してフォース国の兵士がいる辺りに放たれようとしていた。

 パッパラパッパ―――

 何を勘違いしたのか、森の向こう側にあるフォース国の兵士達は開戦の合図を伝えるラッパを吹いていた。

 (開戦の合図を送るなんて時代遅れもいいところだわ。戦国時代のホラ貝と何ら変わりな・・・・・・)

 そこまで考えて、ふと目の前の状況が変わり始めていることに気がついた。次元の歪みは、時が止まったかのように微動だにしていない。

(まさかとは思うけど、『音』に反応しているの?)

「先生!!」

「あの次元の歪み・・・・・・もしかしたら、どうにか出来るかもしれないな・・・・・・音と言うより、楽器の調べに反応してるみたいだった」

「楽器の調べ・・・・・・『音楽』って事ですか?」

「分からない。妖精王がいれば、何とかしてくれただろうが、今は眠りについているからな・・・・・・」

「楽器は、今すぐには用意出来ないからな。楽器の代わりに歌を歌うにしても、精霊達の協力が必要不可欠だ。ひとまずは、学園長の元へ向かおう」

「分かりました。そういえば、学園長は精霊と契約しているんでしょうか? 学園にいた時に噂で聞いたのですが・・・・・・」

「何だ、知らなかったのか? 学園長は、妖精王の『番』だ」

「えっ・・・・・・もしかして、二人は恋人同士ですか?!」

「いや、どっちかって言うと夫婦だな。次元の歪みが止まっている今がチャンスだ。急ごう」

「はい!!」

 学園では、未だに緊迫した空気が漂っていた。私は陛下を連れて、ガルシア先生と一緒に学園長室へ向かったのだった。


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