国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改訂版~

喜びの歌

 次元の歪みの下には、早くも精霊たちが集まり眩い光を放っていた。精霊の中でも、妖精王の側近に当たる直属部隊で、妖精に近い存在だという。精霊たちは『喜びの歌』を歌いながら、歪みの下でクルクルと回っていた。

「シャルロット、行くぞ!!」

「はい!!」

 ソリに乗った先生は陛下と共に、空高く舞い上がった。精霊たちの近くまで行くと、スピーカーを掲げて陛下が光魔法を放つのが見えた。

 私はフォース国の兵士達が、先生や陛下の邪魔をしようとした時点で、戦うことになっていた。ところが、精霊たちの歌があまりにも神々しかったせいか、フォース国の兵士達に動きはなかった。

「んっんんん~」

 近くからハミングが聞こえた。生徒たちが歌っているのだろうかと辺りを見回すと、みんな歌っていた。スピーカーで学園敷地内と、周囲一帯に精霊たちの歌が響き渡っていたため、感化された人たちが歌っている様であった。

(・・・・・・そうか!! 歌で歪みが閉じられていくのが、他の人にも分かったんだ)

 どうやらフォース国の兵士達も武装解除して、一緒になって歌を歌っている様だった。自分以外の人達が全員歌っていて大合唱になっていた。思わず私も一緒になって口ずさんでしまう。

「・・・・・・シェダイン ハイ リッヒ トゥーム」

 次元の歪みは徐々に閉じてゆき、やがて小さくなり・・・・・・気がつけば無くなっていた。

「やった───!!」

 歪みが消えた瞬間、各方面から歓声が上がった。生徒たちも窓から顔を出して笑顔で手を振っている。何故いるのか、よく分からなかったフォース国の兵士達も、時間が経つにつれ、去って行った。

 「何だ? 騒がしいな」

 すぐ後ろにあった茂みから出てきたと思われる男性は、頭に月桂樹のような『葉っぱ』で出来た冠を被っており、貫頭衣のような白い衣服を身に着けていた。

「まさか・・・・・・妖精王ですか?」

「いかにも」

 あとからやって来たガルシア先生は、妖精王を見ると跪いていた。陛下と私も、それに倣って一緒に跪いた。

「結界が破壊されたか・・・・・・眠りに入る前、予備を用意しておいてよかった」

 そう言って、妖精王は懐から『光る石』を取り出していた。


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