国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改訂版~

黒魔術

「実際に何があったのかは、私には分からない。ただ、教会が燃えた後は亡くなった父上が片付けをしていたと、古くから城に仕えてくれている料理長が、そう証言している」

「そんな・・・・・・それで、黒魔術の影響を?」

「分からない。シャルロットは、黒魔術の残り香が周囲に悪影響を与えるという迷信は知っているか?」

「ええ、まあ」

「私からしてみれば、バカバカしいと思うのだが、見えない良くない空気が伝播して、人を呪いが掛かった状態にしてしまうらしい。原因が分からないから、処置も施せないと言われている」

 (前世では、良くない空気が伝播して周りに悪影響を与えることもあるって聞いたことがあるわ。確か、ミラーニューロンだったかな・・・・・・ちょっと、違う気もするけど)

「それが原因で罪の無い人達を国外追放に?」

「私も信じられないんだが、調査結果では、そういう回答しか得られなかった。アンドレは、それ以外にも仕事のストレスや周りの軋轢に耐えられないとか、そういう理由があったのではないかと言っているが、直接の原因は・・・・・・すまないが、分からなかった」

 小説では、呪いに対する解呪薬を飲んで回復していったが、私が作った薬の成分には気つけ薬の成分も含まれている。ユリア殿下も、「頭がスッキリした」と言っていたし、黒魔術が原因ならジルベール様が急に、おかしくなってしまったことへも説明がつく。

 陛下は優しいから、私が無実の罪で国外追放になってしまった事を悔やんでいるのだろう。国外追放されてしまった事実は消えない。けれど、これからどう生きていくかが、私にとっては1番大切だ。

「お気遣いいただき、ありがとうございます。私は大丈夫です」

 陛下は私の肩を抱き寄せると額にキスをした。陛下からのスキンシップは時々あるが、いつも頬か額・・・・・・もしくは、手にキスをするだけであった。私から友達であることを望んだ結果なのかもしれないが、半年も経っても唇以外にしかキスをしていない関係に、もどかしさを感じていた。陛下は「いつまでも待つ」と言っていたが、そういう事ではないのだ。

 我がままなのかもしれないが、抱きしめたり頬にキスをするだけの陛下に少しだけ、いらだちを感じていた。

「シャルロット?」

「過去は過去です。もう、気にしていません。時々、思い出して苦しくなることもありますが、いつまでも過去を振り返っていては良くないと思えるようになりました」

 私は陛下の手を掴むと自、自分から陛下の唇へキスをした。


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