国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改訂版~

Sクラス

 私が通うことになったSクラスは、特別クラスで魔力量の多い人が通うクラスだった。選択授業のため、基本的には朝以外に顔を合わせる機会がなかったが、危険な実技実習などはSクラスのみで行うこともあった。

「炎を的に当てる練習です。いいですか? 的ごと吹っ飛ばすのではありません。的の中央に当ててください」

 先生の話によると、魔力量の多い人は、魔術を使う際に、調節するのが苦手な人が多いということだった。

 10メートル先に立っている的の中央にはリンゴの絵が描かれていた。あれに命中させれば今日の実習は終了らしい。

 初めての魔術で的ごと吹っ飛ばしてしまった私は、炎を的に当てるのに苦労していた。同じクラスの他の子達は、次々と的に命中させて教室へ戻っていった。

「シャルロットさん、苦戦しているようですね」

「先生・・・・・・」

 先生は長い黒髪を風に靡かせながら、こちらへ歩いてきた。

「魔術に慣れていない内は、出来なくても仕方ありません。イメージを明確にしてみてください。細く長い槍で突き刺すようなイメージです。出来ますか?」

「やってみます。ファイアウォール」

 再び炎を手に込めると、的へ向かって炎を放った。的へ真っ直ぐ向かっていった炎は、的を壊すことなくリンゴの右上に穴を空けていた。

「良くなってきましたね。今日は、ここまでにしておきましょう」

 私は息を吐くと、その場に座り込んだ。

「先生・・・・・・魔術って、難しいんですね」

「シャルロットさんは、魔力量が多いですからね。他の人より、より難しく感じるのでしょう」

「20万は多いですか?」

「は?」

「魔力量20万は多いのでしょうか?」

「本当に? シャルロットさん? 魔力量20万なんて聞いたことがありません。普通の魔術師で100程度です。Sクラスで多い者でも1万くらいかと・・・・・・私でも2万ですから」

(私、先生の10倍の魔力量なの?! 確かにヤバいわ)

「この事は、あまり他人へバラさない方がいいでしょう。学園内だけならまだしも、政治面で悪用されると厄介です」

「は、はぁ・・・・・・」

(私が国外追放された令嬢だってこと、先生は知らないんだろうな・・・・・・)



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