国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改訂版~

番外編 第1話

 私が再び眠りから覚めたは時、精霊樹は枯れていた。何があったのかと、辺りを見渡せば、季節が冬のせいだった。

 私は目覚めの不快感に苛まされながらも、魔術学園へ向かった。

(ミーア、元気にしているだろうか?)

 魔術学園の門をくぐると、庭のベンチにはガルシア殿が座っていた。

「ガルシア殿・・・・・・突然、すまない。ミーアは何処に?」

「学園長室にいるよ」

「そうか。あれから・・・・・・結界を張り直してから、どれくらいの時が経った?」

「妖精王、あんたが言ったとおり、あれからちょうど100年だ。ただ、ミーアは時の流れに逆らえなかった。まだ赤ん坊の姿で生きてはいるが、身体に引きずられてしまったのか、記憶を無くしてしまっている」

「そうか」

 私はフラつく足に懸命に力を入れながら、学園長室へ歩いて行った。部屋の中へ入ると、ゆりかごに揺られているミーアを覗き込んだ。

「ミーア・・・・・・」

「ふぎゃ~」

 ミーアは、私の差し出した人さし指を握っていた。笑った笑顔に、涙が溢れそうになった。

 200年前にも、同じ様なことがあった。その時は、また1からやり直せばよいと思っていた。でも、今回は少し違う。前回と併せて、350年分のミーアを失ったのだ。

 妖精王でも年をとるのだ。寿命は定かではないが、あと2000年は生きるだろう。けれど、結界を張り直す度にミーアを失っていては、心が幾つあっても足りる気がしない。いくら精神面がタフな妖精王でも、限界がない訳ではないのだ。

 日が暮れて外が真っ暗になる頃、扉をノックする音が聞こえた。

「失礼します。お食事をお持ちしました」

「ああ・・・・・・すまない」

「何かあれば、何時でも仰ってください」

「そなたは?」

「申し遅れました、私はガルシア先生の弟子でシャルロットと申します」

「シャルロット? はて? 以前どこかでお会いしたかな?」

 ニッコリと笑った初老の白髪女性に、私は既視感を抱いていた。


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