国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改稿版~

第5話

「妖精王、ミーア学園長を連れてフォース国へ行かれるのですか?」

 次の日の朝、出掛けようとしたところで、シャルロットに話し掛けられた。ガルシア殿の弟子は、手に持っている物を少し躊躇いながらも、私の前に差し出した。

「抱っこひもです。必要ないかもしれませんが・・・・・・フォース国は、軍事国家と聞きますし、赤ん坊を抱えての移動は、かなり危ないのではないかと思いまして」

「すまない。これは、どう使うんだ?」

「首から下げる様に、ぶら下げてください。後は布の上、お互い向かい合わせになるように・・・・・・あっ、足は出してください」

「こうか?」

「はい。大丈夫みたいですね」

「ありがとう。では、行って来る。ガルシア殿、留守を任せたぞ」

「おぅよ」

「行ってらっしゃい、学園長」

「あぅー。シャー」

 私は窓を開けると、妖精の羽を使って空を飛び、フォース国へ向かった。


*****


 ガルシア殿が言っていた魔術師が住んでいる屋敷はすぐに見つかった。フォース国の森の中にある古びた家だった。

「あんたか。ガルシアが言っていた妖精王は」

 家の扉はノックをする前に勝手に開き、中から髭を生やした中年の男性が出てきた。まだ若いのかもしれないが、やつれているため、50代くらいに見える男であった。

「おぬしが、テリアテッドか?」

 ガルシア殿から聞いていた魔術狂いのテリアテッドは、フォース国で『魔術オタク』で有名だと聞いている。もともとは、ガルシア殿の生徒だったらしいのだが、フォース国の魔術師団に所属後、戦が嫌になって森に引きこもり、研究者として暮らしているらしい。

「妖精王・・・・・・お前が望む魔術薬はないぞ」

「まだ、何も言っていないが?」

「ガルシア殿から聞いている。半妖に薬なんか与えられない・・・・・・前例がないんだ。間違って死んじまったら、どうするんだ? 俺には、責任が取れない」

「薬じゃなくてもいい・・・・・・何か役に立ちそうな魔術はないのか?」

「ないね。人間用の物ならあるが・・・・・・使わない方がいいだろう」

「人間用で構わない。分けてはもらえないだろうか?」

「さっきも言ったろう? 薬は人にとって有効でも、妖精にとっては毒になる物も多いんだ。申し訳ないが諦めてくれ。効くかどうかも分からない物を、ガルシア殿から紹介された人へは渡せないよ」

「そこを、何とか・・・・・・」

「しつこいな、あんたも!!」


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