国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改稿版~

第7話

 それから、10年の月日が流れた。ミーアは、私が毎日頭を撫でることによって、魔力を流し込み、6才位にまで成長していた。しかしながら、記憶を取り戻したような素振りは全くと言っていいほど見受けられなかった。

「妖精王・・・・・・具合が悪いの?」

「いや、すまない。少し、昔を思い出してしまってな」

 私達は落ち葉を踏みしめながら、湖の周りを散歩していた。あれから何度も湖へは散歩に行ったし、思い出しそうなことは何でもした。けれど、ミーアが記憶を取り戻すことはなかった。

 テリアテッドがくれた薬草を使おうか悩み、相談するために再び彼の元を訪ねたが、彼は戦死していた。戦などには参加はしていなかったが、街で買い物をしている時に巻き込まれたのだという。私は懐からテリアテッドに貰った薬草を取り出すと、ミーアと薬草を交互に見た。

「もしかして昔の私を思い出して泣いているの? ミーアは『幸せだった、もう充分よ』と言ったのでしょう? なら、仕方ないと思うの」

「違う・・・・・・違うんだ、ミーア」

「私が、前の私より貴方を愛するわ」

「ミーア」

 彼女は小さな身体で、私を抱きしめていた。私は薬草袋を再び握り直すと、湖へそっと流した。

「なぁに? それ。いいの?」

「ああ、いいんだ・・・・・・これで、いいんだ」

 私がミーアの頭を優しく撫でると、彼女は「あっ!!」と、小さく叫んだ。

「どうしたんだ?」

「一つだけ、思い出したの」

「何を?」

「この湖で指輪をなくしたこと・・・・・・貴方から貰った大切なプレゼントだったのに・・・・・・」

「ミーア!!」

 それは、まぎれもない以前のミーアの記憶だった。私はミーアを抱きしめると、再び泣いてしまっていた。

「そんなに泣いてると、涙で湖が出来てしまうわよ」

「・・・・・・構わない。ミーア、愛している」

「どうしたの? 変な人ねぇ」

 彼女は私を抱きしめながら、ずっと背中をさすってくれていたのだった。











最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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