国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改稿版~

番外編3 パラレルワールド

※この作品は、本編とは違う世界(平行世界)での、物語になります。本編の内容とは直接関係ありませんので、ゆるい気持ちでお読みいただければと思います。


~小説『蒼き霧の晴れる先に』~
※一部抜粋

「殿下、どうされたのです?」

「ああ、リリーか・・・・・・先日、北の教会が火事になっただろう? その後処理をしてきた」

「それで、そのような汚れが・・・・・・」

「すまない。汚かったか?」

 王太子であるジルベール殿下は、自身の着ているマントを掴むと、衣服についた汚れを探していた。

「いいえ。ジルベール殿下、申し訳ありませんが、じっとしててください」

「ああ・・・・・・分かった」

「大地を照らす光のごとく、我らを導き給え───ランブレ!!」

 殿下は光に包まれた後、元の状態へ戻っていた。黒い靄は、何処にも見当たらない。

「浄化の魔術かな? 何だか身体が軽くなったみたいだ。礼を言う」

「良かったですわ」

 殿下を取り巻いていた黒い靄は、呪いだろうか・・・・・・? 私の知識と技術だけでは、到底分からない。

 私は2週間前に、この世界へ来る前の記憶を思い出していた。良くは分からないが、どうやらライトノベルで話題になっている『異世界転生』というやつらしい。こちらの世界で貴族として転生し、最近になって記憶を取り戻したが、こちらの世界での『リリー』としての記憶が、1週間前までは覚えていたのに思い出せなくなりつつあった。

 『リリー』としてではなく、『前世の私』として生きている自分に対して、普通に接してくれる周りの人間に違和感を覚えていた。けれど、そんなことは誰にも言えなかった。

 私が殿下の婚約者になる前、殿下の婚約者だったシャルロット伯爵令嬢は、どういう理由なのかは分からないが、国外追放されていた。でも今は、隣国で魔術の先生をしてるという。

 (呪いについてシャルロット伯爵令嬢に聞いてみたいわ。城の宮廷魔術師の人達は、薬草オタクばかりだもの。でも、今の殿下の婚約者に、そんな事を聞かれたくはないでしょうね)

 以前、殿下の婚約者だったシャルロット伯爵令嬢は、転移魔術に詳しく、研究にも熱心だという───前世にいた世界に戻れないか聞いてみたいところだが、この姿では日本へ戻っても浮いてしまうだろう。

 私は自分の金髪の髪を手で撫でると、自分の瞳の色が、淡いピンク色だったことを思い出していた。

「・・・・・・どうかしたのか?」

「いえ・・・・・・。殿下の無事を、守護神アウラに感謝していたところです」

「そうなのか?」

 こちらを見て不思議そうな顔をしている殿下へ、私は慌てて片膝をつき、忠誠を尽くす祈りのポーズをとった。

「ジルベール殿下に、最大のご加護を。アクアヒール!!」

 私が軽い回復魔術を掛けてさしあげると、殿下は微笑みながら手を差し出してきた──私は殿下の手を取ると、殿下にエスコートして貰いながら、晩餐会へ向かったのだった。


< 70 / 70 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:8

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop