国外追放から帰ってきた伯爵令嬢は、スタンピードをやっつけて宮廷魔術師になりましたが、平凡な生活を目指していたので、32才年下の国王陛下に婚約を迫られて困っています!!~改訂版~

中間テスト

 魔術を調整する技術が身についた頃、中間テストが行われた。ペーパーテスト以外に、一人一つ魔術具を作るという課題もあったのだが、私は上手くいかずに二つも作ってしまっていた。

「アウトだな」

「えっ・・・・・・」

 教師塔へ呼び出された私は、ガルシア先生に、このままでは赤点になってしまうと言われていた。

「魔術具の裏に描かれている魔術陣の設定がおかしい。これじゃ、魔力量が最低でも1万無いと動かせないじゃないか」

「そこは・・・・・・。いつか、改良したいと思っています」

「いつかって、テストだぞ? どうするんだ?」

「まぁまぁ、いいじゃないの」

 部屋の中へ入って来ながらそう言ったのは、ミーア学園長だった。

「誰でも使えるように魔術具を作るのは、商品化を念頭に置いているからでしょう? 学園のテストで、そこまで考える必要は無いと思うの。自由な発想こそ大切だと思うし、評価してあげるべきよ」

「学園長。それでは、生徒が結界の外に出た後、苦労します。世の中の常識や価値観を学ぶことこそ大切だと思っています」

「そうね。でも、常識にとらわれすぎるのも、良くないわ。こっちのスピーカーなら、改良すれば、今すぐに使えるんじゃない? これ、借りてっていいかしら?」

「はい、どうぞ」

 学園長は、私の作った魔術具を嬉々とした顔で手に取ると、帰っていった。

「学園長が、ああ言ってるからな。しょうがない。今回は、赤点なしだ」

「えっ、いいんですか?」

「良くないが、私もシャルロットのセンスは悪くないと思ってるんだ。ただ作られた魔術具は、シャルロット以外に使える奴がいないから、知らない奴が見たら起動するのかさえ怪しい気がしてしまうだろうな」

「つきますよ、ほら」

「・・・・・・だから、今、確認出来てもしょうが無いんだよ」

「??」

「例えばシャルロットが良い魔術具を作ってオークションに出品したとする」

「・・・・・・」

「それを購入した人物が使えないばかりか、不良品を売りつけられたと文句を言われたら、どうするんだ?」

「説明します」

「いいか? 初めて会った奴の説明を信じるような奴ばかりじゃないんだ。世の中にはいろんな奴がいる」

(前世で苦労してきたんだから、それくらい知ってるわよ・・・・・・)

「はい」

「でも、今回は作り直し無しでいい。学園長がいいって言ってしまった以上、仕方がないからな。上司があんなんじゃ、本当に困るよ」

「お疲れ様です、ガルシア先生」

「・・・・・・シャルロット、魔術訓練は上手くいってるか?」

「はい。以前より、良くなったと思います」

「・・・・・・私も、魔力量の多さにはだいぶ苦労したからな。あの10倍の練習量とか、考えただけで吐きそうだな」

「少しずつ、良くなればいいかなと思ってます。地道に努力します」

「そうだな、それがいいだろう。今すぐじゃなくていい。ゆっくり、気長にやってくれ。卒業は待ってくれないけどな」

「ガルシア先生!!」

「すまない。プレッシャーをかけるつもりは無かったんだ。とにかく、今回は特別に赤点無しだ。帰っていいぞ」

「ありがとうございます。失礼します」

 私は一礼をすると、教師塔を出て自分の部屋へ戻って、今まで通り放課後の魔術訓練を始めたのだった。


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