氷と花

 ネイサンを見つめる時、マージョリーはいつも(おび)えた顔をする。まるでネイサンが、彼女を罰するために地獄から遣わされた悪魔であるかのような瞳で彼を見つめる。昔からそうだった。

 いまさらそれが変わることもなさそうだった。

 ネイサンにも非はある。
 もともと愛想のいい人間ではないうえに、禁じられた愛情を隠すため、彼女にはできるだけ冷たく接してきていた。もう何年も。

 ──ちくしょう、この混乱の中で、最も馬鹿なのは自分ではないのか?

 フレドリックの呪われた結婚式で、それでも背筋を伸ばし、慎ましやかで愛らしいドレスに身を包み、涙をこらえていたマージョリーの姿が忘れられない。

 泣き叫んでもよかったはずだ。
 どこかに隠れて姿を見せないでも、誰も文句は言わなかっただろう。

 もしかしたら、フレドリックを殴ってやってもよかったかもしれない。ネイサンも喜んで協力しただろう。

 しかし、彼女は参列者の列の端にそっとたたずみ、静かに涙をこらえていた。
 その凜とした、しかし儚げな姿に、ネイサンは何十回目か分からない恋に落ちた。マージョリーに。いつも、マージョリーに。

 これは愛のない結婚になるのだ、と、ネイサンは自分に言い聞かせた。

 マージョリーは自分を愛していない。
 それどころか恐れている。

 彼女にとって、自分はただの逃げ道に過ぎないのだ……。他に行き場がなかったからネイサンの元に来たのであって、愛も、友情も、親愛の情さえもない。決められた、望まない結婚。

 とっくに分かっていたはずのこの事実が、今のネイサンには、ひどく残酷なものに思えた。
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