氷と花
すれ違うふたり 〜 "You still love .. Frederick"
ネイサンがさらになにか言おうとした時、書斎の入り口にディクソンの影が現れた。執事の手には、取っ手のついた銀の盆にのせられたカップがふたつと、数通の手紙がある。
ふたりが同時に振り返ると、ディクソンはその場に立ち止まって入室するのをためらった。
「お邪魔しても……よろしいでしょうか?」
ディクソンは意味ありげに目を細めている。もちろん、この質問はネイサンに向けられたものだったから、マージュは息を潜めて彼の返事を待った。
「入ってくれ」
ネイサンは執務机の上に両手を広げたまま、短くそう言って執事をうながした。
ごほんと嘘の咳払いをしたディクソンは、「マージュ様、失礼」と断りを入れてマージュの横を通り過ぎ、執務机の上に銀の盆を置いた。
まずは手紙を、それから飲み物の入ったカップをひとつずつ丁寧に机の上にセッティングすると、ディクソンはネイサンと事務的な話をはじめた。
「さきほど使いが参りまして、昼前に来客の予定だったトレッド様が来られなくなったとのことです。明日に延期しても構わないか、と」
「明日?」
ネイサンは不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。「明日は別の用事がある。トレッドが本当にわたしと話したいなら、今日の午後までにここへ来るように伝えろ」
「そうおっしゃると思いましたので、すでにそう伝えておきました」
ふたりが同時に振り返ると、ディクソンはその場に立ち止まって入室するのをためらった。
「お邪魔しても……よろしいでしょうか?」
ディクソンは意味ありげに目を細めている。もちろん、この質問はネイサンに向けられたものだったから、マージュは息を潜めて彼の返事を待った。
「入ってくれ」
ネイサンは執務机の上に両手を広げたまま、短くそう言って執事をうながした。
ごほんと嘘の咳払いをしたディクソンは、「マージュ様、失礼」と断りを入れてマージュの横を通り過ぎ、執務机の上に銀の盆を置いた。
まずは手紙を、それから飲み物の入ったカップをひとつずつ丁寧に机の上にセッティングすると、ディクソンはネイサンと事務的な話をはじめた。
「さきほど使いが参りまして、昼前に来客の予定だったトレッド様が来られなくなったとのことです。明日に延期しても構わないか、と」
「明日?」
ネイサンは不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。「明日は別の用事がある。トレッドが本当にわたしと話したいなら、今日の午後までにここへ来るように伝えろ」
「そうおっしゃると思いましたので、すでにそう伝えておきました」