氷と花
 ネイサンからの返事は早かった。
 またたくまに唇をふさがれ、呼吸を奪おうとするかのような激しい口づけに襲われる。マージュは必死にそれを受け入れ、動きに(こた)え、覆いかぶさってくるネイサンの体重を支えようとした。

 しかし、ネイサンはすぐにマージュをベッドに押し倒した。
 シーツを背に寝かされたマージュは、息を荒げながらネイサンを見上げる。

 ベッドの上に膝立ちしたネイサンは、荒々しく外套を脱ぎ捨て、むしり取るような勢いでクラヴェットを外した。すべてが危険を感じるほど乱暴な動作だったにもかかわらず、マージュは欲望をかき立てられていった。

「ネイサン……」

 つぶやき終わるより早く、ネイサンはマージュの外套の前を開き、はだけさせていた。

 現れたデイ・ドレスは地味な茶色で、きっちりと首元までボタンが閉められていたから、あまり男性をそそるようなものではなかっただろう。しかしネイサンは、まるで天国の情景をのぞき見たかのように恍惚とした表情で、マージュを見下ろしていた。

「いくらでも新しいものを買ってあげよう。だいたい、君にはもっと明るい色が似合う……」

 ネイサンの筋立った手が、指が、デイ・ドレスのボディス部分をなで上げる。マージュは興奮に息がつまりそうになった……その瞬間、ネイサンの腕がドレスの前身頃をつかみ、激しく引きちぎった。
 真珠のボタンが涙のようにシーツと床に散り、マージュの下着姿があらわになる。

「あ……」

 恥じらいに身をよじろうとしたマージュを、ネイサンの腕が止める。
 両手をシーツの上に抑えつけられ、思わず背筋を反らそうとすると、ネイサンの口がマージュの胸の突起をひとつ吸い上げた。

「あ……ひぁっ!」

 下着の薄い絹を通して、ネイサンの歯と舌がマージュを困惑させる。柔らかい(いただき)はすぐに熱くなり、舌で舐められるたびに、コリ、コリ、と固くなっていく。
 敏感になっていく。

 ネイサンは執拗にマージュの胸を味わい、彼女を楽園へと(いざな)っていった。
 マージュから嬌声が漏れる。最初は屋敷の住人のことを考えて唇を噛んだが、次第にそんな努力は無駄になっていった。我慢なんてできない。できない。

「あぁん……! そ、そこまで……あ、あ!」

 気がつくと、ネイサンはもう一方の胸を手でまさぐっていた。最初は柔らかく胸の膨らみを揉みしだき、じょじょに頂上へ上りつめていって乳首へとたどり着くと、指で強く刺激する。両方の胸を愛撫されたマージュは背を弓なりにして、すすり泣いた。

「ネイサン! ネイサン……!」

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