氷と花


 * 


 ふたりがひとつに繋がった瞬間、マージュは確かに、ネイサンが事前に言っていた痛みを感じた。
 しかしネイサンは、この繋がりがこれほどまでに幸せで、温かく愛情深い行為であるかは言ってくれなかった。

 マージュのすべてを手に入れた時、ネイサンはかすかにしか聞き取れないくぐもった声で、でも確かに、マージュを愛していると言った。ずっと昔から。そしてこれからも。
 永遠に。
 マージュは、わたしも、と答えた。

 ふたりはシーツの波間に抱き合って横たわり、その日曜日をずっと……心配したディクソンが様子を見に来る夕方まで、睦み合いながら過ごした。
 ネイサンとマージュを隔てていた氷河は溶け、このままふたりは静かに結婚し、愛のある夫婦になるのだと、屋敷中の誰もが信じて疑わなかった。
 その時は……。
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