【超短編】食べ放題の美味い肉
会社の帰りの道筋に、祝いのスタンド花が賑やかだった。
開店するまで気付かなかった。ここはカフェだったかな、なんだったか飲食店だったような気がする。
新しく出来たのは焼き肉屋だった。食べ放題で二千四百八十円なら破格だ。迷わず入る。
「いらっしゃいませ」
やけに色っぽい女性店員が微笑みかけた。
ここはいわゆる歓楽街。頭に「や」のつく自由業のひとが仕切る街だ。ひょっとしたら女性店員も、そういう店の子なのかもしれない。
そんなことを思いながら、トレイを受け取り肉を物色する。牛肉、豚肉、鶏肉。満遍なく取って焼く。
ところが豚肉だと思ったそれは、そうではなかったらしい。生まれてから食べたこともないほど、美味い肉だった。
すぐにその肉をリピートする。
「美味い」
思わず独り言が漏れてしまうほど。
たらふく食べて満足した頃、今更になってふと気にかかる。
――なんの肉なんだろう?
俺は件の肉のところに行って、米粒みたいに小さな字の案内プレートに目を凝らす。
『茨城産三十二歳女性』
そう書いてあった。
開店するまで気付かなかった。ここはカフェだったかな、なんだったか飲食店だったような気がする。
新しく出来たのは焼き肉屋だった。食べ放題で二千四百八十円なら破格だ。迷わず入る。
「いらっしゃいませ」
やけに色っぽい女性店員が微笑みかけた。
ここはいわゆる歓楽街。頭に「や」のつく自由業のひとが仕切る街だ。ひょっとしたら女性店員も、そういう店の子なのかもしれない。
そんなことを思いながら、トレイを受け取り肉を物色する。牛肉、豚肉、鶏肉。満遍なく取って焼く。
ところが豚肉だと思ったそれは、そうではなかったらしい。生まれてから食べたこともないほど、美味い肉だった。
すぐにその肉をリピートする。
「美味い」
思わず独り言が漏れてしまうほど。
たらふく食べて満足した頃、今更になってふと気にかかる。
――なんの肉なんだろう?
俺は件の肉のところに行って、米粒みたいに小さな字の案内プレートに目を凝らす。
『茨城産三十二歳女性』
そう書いてあった。