不器用な灯火
「大丈夫だよ。ありがとう。」
わたしがそう言うと、久登は納得いっていないような表情で「そうか?なら、いいんだけど。」と言った。
今日も出勤して、いつもと変わらない業務をこなす。
しかし、やはり昨日のことがあり、仕事がはかどらなかった。
すると、「あら、どうしたの?仕事が手につかないみたいね。」と絵里奈社長が不敵な笑みを浮かべて言ってきた。
「すみません、ちょっと寝不足で、、、。」
「そんなの言い訳にならないわよ。ちゃんと仕事してよね、巨乳ちゃん?」
絵里奈社長の言葉でハッとするわたし。
昨日のあの男たちもわたしを「巨乳ちゃん」と呼んでいた。
まさか、絵里奈社長の仕業、、、?
でも、何の証拠もない。
絵里奈社長は鼻で笑うと、自分のデスクへと戻って行った。
その日の休憩時間。
やはり、わたしの様子がいつもと違うと思ったのか、久登が「ちょっと屋上行かないか?」と誘ってくれた。
わたしは「うん。」と返事をすると、久登と共に5階建てビルの屋上へと向かった。
今日は晴天。
気温も丁度良く、風が心地よかった。
すると、久登が「千紗、何かあったんだろ。」と言ってきた。
わたしはドキッとしながらも平然を装い、「な、何もないよ。ちょっと寝不足なだけだから。」と笑って誤魔化した。
「嘘つけっ。俺が分からないとでも思ってるのか?何年の付き合いだと思ってんだよ。」
久登はそう言うと空を見上げ、わたしの誤魔化し笑いに不機嫌そうな表情を浮かべた。
「無理には聞かないけど、言える時がきたら言えよ。俺はお前の、、、味方、だから。」
照れながらそう言う久登の言葉が嬉しくて、泣きそうになった。
「うん、ありがとう。久登。」