不器用な灯火

「あのね、久登。」

わたしがそう呼ぶと、久登は「ん?」と言って、こちらを向いた。

「わたし、、、この町を出ようかと思ってるの。」
「えっ?」

わたしの言葉に驚く久登。
久登は「何で急に?」と言った。

「わたしが、、、この町に、居ちゃいけない気がして、、、。」

そう話している内に涙が溢れてきたが、わたしは話を続けた。

「わたしはお父さんに親孝行がしたくて、みんなが都会に出ていっても、この町に残ってた。けど、、、お父さんが居なくなっちゃって、、、わたし、ひとりぼっちになっちゃったし、、、。あとね、久登が居るから、この町から離れたくないってのもあったの。」

わたしの言葉に久登は「俺?」と言った。

「うん、、、わたし、久登のことが好きだったから、、、。でも、、、もう好きでいる資格が、わたしにはない、、、。こんな穢れたわたしが、久登を好きでいちゃいけないって、、、思って、、、。」

泣きながら話すわたしの言葉に久登は黙ったまま耳を傾けてくれていた。

そして、わたしは「明日、退職届を出すつもり。そして、お父さんの四十九日が終わったら、この町を出ようと思ってる。それまで、、、まだ久登には迷惑かけちゃうけど、よろしくね。」と言うと、涙を堪え笑顔を作って見せた。

久登はそんなわたしの言葉を最後まで黙ったまま聞き、そして俯いた。

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