不器用な灯火

父の四十九日法要が終わり、その日の夕方。
わたしは自宅があった場所の目の前にしゃがみ込んで、ぼんやりしていた。

今まで帰ってきていた家が跡形もなく消えている。
まだ焦げ臭いニオイが少し残っていた。

思い出すのは、得意そうに言う「今日は父さん特製の唐揚げだぞ!」というお父さんの言葉。

お父さんは元々、料理の出来る人ではなかった。
お母さんが亡くなってから、料理本を大量に買ってきて、わたしのために必死に料理の勉強をして作るようになったのだ。

高校生のときは、毎日同じおかずばかりで文句を言ったこともあったっけ。

今思えば、有り難かったなぁ。

お父さんの特製唐揚げ、、、もう食べれないんだ。

食べたいなぁ、、、

そんなことを思い出し、考えていると涙がでてきて、わたしは俯いて一人泣いていた。

すると、「千紗。」と呼ぶ声が聞こえた。

ふと顔を上げると、そこには仕事帰りの久登の姿があった。

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