不器用な灯火

「あ、ごめん。まだ荷物取りに行ってなかった。今、取りに行くね。」

わたしは涙を拭きながらそう言うと、立ち上がった。

すると、久登が「その前にちょっといいか?連れて行きたい場所があるんだ。」と言った。

わたしは何だろう?と思いながら、久登のあとについて行った。
久登が向かった先は、草むらに隠れた小さな川だった。

「ここが?連れて来たかった場所?」
「うん。」

そう返事する久登は、草むらからあるものを二つ手に持ち、それをわたしに見せた。

「あ、これって、、、」
「灯籠流し。一緒に流さないか?おじさんが無事天国へ行けるように。」

そう言うと、久登は灯籠に火を灯し、片方をわたしに渡してくれた。

「綺麗、、、」

温かな光に気持ちも和む。

わたしと久登はしゃがむと、同じタイミングで一緒に川に灯籠を流した。

ゆっくりと流れていく灯籠。

お父さんが無事に天国に行けますように。
そして、お母さんと会えますように。

わたしと久登は灯籠の光が見えなくなるまで、灯籠が流れて行った方を見つめていた。

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