不器用な灯火
「なぁ、千紗。」
灯籠が見えなくなったあと、久登がわたしを呼ぶ。
「実は、俺も、、、退職届出してきた。」
「えっ?!」
久登の言葉に驚き、わたしは「どうして?!」と言った。
久登は川の方へ視線を落とすと、「千紗が居なくなったら、俺がこの町に残る意味がなくなるから。」と言ったのだ。
「えっ、、、。」
「俺も、、、千紗が、好きだ。」
思いもしなかった突然の告白に、わたしは信じられず、久登の横顔を見たまま固まってしまった。
しかし、ふと我に返り、自分にダメだ、ダメだと言い聞かす。
「でも、わたしは、、、」
「千紗は、自分が穢れてるから、俺を好きでいる資格はないって言ってたけど、、、そんなの関係ない。俺は、千紗自身が好きなんだ。」
久登の言葉に一粒の涙が頬を伝う。
久登は、優しく微笑むとそっとわたしを抱き寄せた。
「千紗は、穢れてなんていない。」
「でも、、、わたしは、、、」
「無理に言わなくていい。穢れてると思うなら、俺が上書きしてやるから。」
久登はそう言うと、ゆっくりと身体を離し、そしてそっとわたしの唇にキスをした。