不器用な灯火

「どうしたんですか?部長。」

わたしがそう言うと、住田部長は「今日からこの会社の会長が変わった!そして、わたしは部長から課長にされたんだよ。それで、本間社長が部長になった。」と頭を抱え、そう言った。

「え?会長が変わった?」

さすがの久登も驚きを隠せずにいた。

「それに社長が部長で、部長が課長になったなら、新しい社長は誰なんですか?」

わたしがそう訊くと、住田部長、改め住田課長は「新しい会長である古瀬会長のお孫さん、古瀬絵里奈さんが代表取締役社長になったよ。」と言うと、住田課長は窓際に視線を移した。

その視線の先には、窓からこの小さな町並みを眺める如何にもお嬢様育ちのあの女性が立っていたのだ。

「あんなのが社長なんですか?」
険しい表情をして久登は言った。

「こら、社長に失礼だぞ。言葉を慎みなさい。」

久登の言葉に住田課長は慌ててそう言ったが、そう思うのも無理はなかった。

新しい社長であるその女性は、22歳であるわたしたちとあまり変わらない年齢のように見え、淡いピンクのフレアスカートを履き、パーマがかった茶色い髪の毛をポニーテールにし、赤いリボンで束ねていた。

そして窓の外を眺めながらウキウキした様子で鼻歌を歌っていたのだ。

< 3 / 18 >

この作品をシェア

pagetop