【完結】皇帝陛下の軍師寵姫
第2章
10 不穏な噂話
その日も私はルードラの街に来ていた。
自分の力で復興したこの地が特に気に入ってしまったのだ。
ルードラの酒場に入ると、鉱山員達がビールで祝杯を上げ、ナッツやチーズなどのつまみを運ぶ陽気な店員達が居た。
私はそんな酒場の雰囲気に馴染むように質素なワンピースを着ていた。
ビールと干し肉を注文して、しばらく待っていると、こんな噂話が聞こえてきた。
「我が国には、軍師姫がいるらしいぞ。」
「知ってる、知ってる。
皇帝陛下のお気に入りらしいな。
なんでも、夜から朝までずっと寝所に籠っているとか。」
「それはそうと、ベルベットとの戦いの成果は軍師姫によるものだそうじゃ無いか。」
「軍師姫とはどんな姫なのだろうなぁ…?」
「しかし、ここルードラも不穏になったもんだ。
知ってるか?
金山に目をつけたシャルナーク国がここに攻め込んで来るとか。」
「うーん、今のうちに稼いで逃げた方が良さそうだな。」
などなど…
そうか!
迂闊であった!
ここに金山が出ると分かれば、他国に狙われるのは目に見えているでは無いか!
その対策を、私は怠っていたのだ!
私はすぐに、馬車を飛ばして後宮に戻った。
そして、本城に出向いた。
「これは…?
軍師姫とか言う小娘か…
このような時間に城に何の用だ?」
確か…
騎士長のベルゼンとか言う…
私は記憶を辿る。
鋭い目で私を睨みつける彼に良い印象はない。
「火急の用件にございます!
どうか、陛下に御目通りを!」
私は焦っていた。
「ならん!
もう、夜の9時だ!
皇帝陛下はお休みになっている!
明日にせよ!」
「しかし…!」
そう問答になった所で、皇帝陛下が現れた。
「なんだ、寝室まで声が響いておるぞ。
とにかく、エティーナ、我が部屋に来るが良い。」
「へ、陛下!
恐れながら申し上げます!
後宮の姫を陛下の部屋に入れるという事は…!」
「良いのだ…
ベルゼン、下がれ。」
「…はっ!」
そうして、皇帝陛下の部屋に連れて行かれた。
虎の絨毯に像の牙が飾られ、煌びやかなシャンデリアに照らされたその部屋は豪華絢爛。
今更ながら私が居ても良いのだろうか?
しかし、今はそんな事を気にしている場合ではないのだ。
「皇帝陛下…!」
「何だ?
ワインでも飲まぬか?」
「いえ、結構でございます。
大事なお話があるのです。」
「ふむ。
申してみよ。」
「ルードラの復興は確実にうまくいきました。
鉱山員達でも賑わい、農業の街としてもまずまずの売り上げを上げております。
特に金は大量に出ているとか…」
「良かったではないか。
全てそなたの力だ。」
「いいえ、よくないのです…!
ルードラでこんな噂話が流れていました。
隣国のシャルナーク国が金山を狙い攻め行ってくるだろう、と…!」
「なるほど…
鉱物は、特に金ともなれば、戦国の世においては貴重な財源だからな。
狙う気持ちも分からなくは無いな。」
皇帝陛下は少しも動揺されていない。
「皇帝陛下…?
何か策がおありなのですね…?」
「気づいたか?
そうよ、今度は俺の力をそなたに見せる番だ。
もう、手は打ってある。
明日から、少しルードラに外泊せぬか?
良いものが見れるぞ?」
皇帝陛下は不敵にニヤリと笑いそう言った。
自分の力で復興したこの地が特に気に入ってしまったのだ。
ルードラの酒場に入ると、鉱山員達がビールで祝杯を上げ、ナッツやチーズなどのつまみを運ぶ陽気な店員達が居た。
私はそんな酒場の雰囲気に馴染むように質素なワンピースを着ていた。
ビールと干し肉を注文して、しばらく待っていると、こんな噂話が聞こえてきた。
「我が国には、軍師姫がいるらしいぞ。」
「知ってる、知ってる。
皇帝陛下のお気に入りらしいな。
なんでも、夜から朝までずっと寝所に籠っているとか。」
「それはそうと、ベルベットとの戦いの成果は軍師姫によるものだそうじゃ無いか。」
「軍師姫とはどんな姫なのだろうなぁ…?」
「しかし、ここルードラも不穏になったもんだ。
知ってるか?
金山に目をつけたシャルナーク国がここに攻め込んで来るとか。」
「うーん、今のうちに稼いで逃げた方が良さそうだな。」
などなど…
そうか!
迂闊であった!
ここに金山が出ると分かれば、他国に狙われるのは目に見えているでは無いか!
その対策を、私は怠っていたのだ!
私はすぐに、馬車を飛ばして後宮に戻った。
そして、本城に出向いた。
「これは…?
軍師姫とか言う小娘か…
このような時間に城に何の用だ?」
確か…
騎士長のベルゼンとか言う…
私は記憶を辿る。
鋭い目で私を睨みつける彼に良い印象はない。
「火急の用件にございます!
どうか、陛下に御目通りを!」
私は焦っていた。
「ならん!
もう、夜の9時だ!
皇帝陛下はお休みになっている!
明日にせよ!」
「しかし…!」
そう問答になった所で、皇帝陛下が現れた。
「なんだ、寝室まで声が響いておるぞ。
とにかく、エティーナ、我が部屋に来るが良い。」
「へ、陛下!
恐れながら申し上げます!
後宮の姫を陛下の部屋に入れるという事は…!」
「良いのだ…
ベルゼン、下がれ。」
「…はっ!」
そうして、皇帝陛下の部屋に連れて行かれた。
虎の絨毯に像の牙が飾られ、煌びやかなシャンデリアに照らされたその部屋は豪華絢爛。
今更ながら私が居ても良いのだろうか?
しかし、今はそんな事を気にしている場合ではないのだ。
「皇帝陛下…!」
「何だ?
ワインでも飲まぬか?」
「いえ、結構でございます。
大事なお話があるのです。」
「ふむ。
申してみよ。」
「ルードラの復興は確実にうまくいきました。
鉱山員達でも賑わい、農業の街としてもまずまずの売り上げを上げております。
特に金は大量に出ているとか…」
「良かったではないか。
全てそなたの力だ。」
「いいえ、よくないのです…!
ルードラでこんな噂話が流れていました。
隣国のシャルナーク国が金山を狙い攻め行ってくるだろう、と…!」
「なるほど…
鉱物は、特に金ともなれば、戦国の世においては貴重な財源だからな。
狙う気持ちも分からなくは無いな。」
皇帝陛下は少しも動揺されていない。
「皇帝陛下…?
何か策がおありなのですね…?」
「気づいたか?
そうよ、今度は俺の力をそなたに見せる番だ。
もう、手は打ってある。
明日から、少しルードラに外泊せぬか?
良いものが見れるぞ?」
皇帝陛下は不敵にニヤリと笑いそう言った。