【完結】皇帝陛下の軍師寵姫
18 平和式典
そして、エドバ城にて、ベルベット国とエドババーバ国の平和条約を締結する式典が行われた。
みな、美しく着飾り、今回のテーマは百合の花のようだ。
百合の巨大な生花が会場には咲き誇り、白い鳩が庭には放たれていた。
白い鳩は平和の象徴、そして、百合の花はベルベット国の国花であった。
そんな意味が込められたエドバ城のホールと中庭に目をやり、平和に一歩ずつ近づいていることを実感した。
エドババーバの皇帝陛下とベルベット国の国王が共に条約を読み上げ、後は盛大なるパーティーに変わった。
私の周りには、何故か、人、人、人。
人で溢れかえっていた。
「私王都ベルベで商いをしております…ミンスクと…」
「えぇい!
私が先だ!
私めは、港町ベッセを統治している侯爵家でして…」
「いやいや、軍師姫、私の方と仲良くしてくだされ!」
「お前は黙れ!
息が臭いぞ!」
「軍師姫様におかれましては…」
なんだ?
一体私の評判はどうなっているのだ???
狼狽えて、五歩ほど後退したところ、人だかりは追いかけるように押し寄せてくる。
圧迫され、潰れかけそうになったその時、ある1人の男性が私の腕を引き寄せ、人の輪から助けてくれた。
「皆の者、控えよ。
軍師姫が困っているだろう。」
そう言った男性は銀髪に薄紫の瞳をした、美青年であった。
はて、誰だろう?
しかし、その青年がそう言うと、私を取り囲んでいた人々は蜘蛛の巣が散るように去っていった。
「あ、ありがとうございます!」
「いいえ、ウチの貴族や商人達が失礼した。」
ウチの?
と言う事は…?
「私はベルベット国の第一王子、サイアです。
よろしくお見知り置きを、エティーナ姫。」
「これは、これは、王子様でいらっしゃったのですね。
失礼しました。」
「いいえ、失礼はこちらの方だったでしょう。
急に腕を掴んで申し訳ない。
しかし、あなたを救う為には…」
「いえ、わかっておりますゆえ。
ご心配なさらず。」
「やはり賢明な姫のようだ。」
「私に何かご用件がおありですか?」
私はなんとなくそう尋ねた。
「そこまで見抜かれていましたか…」
「と言うと?」
「実は、我が国には眠っているミスリル鉱山があるのです…
そこを掘ればかなりの確率でミスリルが出るはずなのですが…
何せミスリルの眠っている場所は深くて、とても少数の人の力では…」
「なるほど。
そこで、私の協力を仰ぎたい、と?」
「ご明察。」
「皇帝陛下に許可を取らなければなりませんが、それならば、ルードラの炭鉱員と土魔導師を派遣しましょう。」
「誠ですか!?」
「ただし、こちらにも条件がございます。
それを飲めれば、の話ですわ。
ミスリルが出た暁には、ミスリルの8%を我が国に献上する事。
いかがですか?」
「…仕方ありません。
飲みましょう、その条件!」
「では、皇帝陛下に話してみますゆえ、あちらに参りましょう。」
そうして、ベルベット国からは数日後にミスリルが採掘され、エドババーバにも8%のミスリルが流れることになった。
こうして、なんだかよく分からない式典は、相変わらず政の話で幕を閉じた。
その後、サイア王子とは文通友達となったのは、陛下にはなんとなく秘密だ。
みな、美しく着飾り、今回のテーマは百合の花のようだ。
百合の巨大な生花が会場には咲き誇り、白い鳩が庭には放たれていた。
白い鳩は平和の象徴、そして、百合の花はベルベット国の国花であった。
そんな意味が込められたエドバ城のホールと中庭に目をやり、平和に一歩ずつ近づいていることを実感した。
エドババーバの皇帝陛下とベルベット国の国王が共に条約を読み上げ、後は盛大なるパーティーに変わった。
私の周りには、何故か、人、人、人。
人で溢れかえっていた。
「私王都ベルベで商いをしております…ミンスクと…」
「えぇい!
私が先だ!
私めは、港町ベッセを統治している侯爵家でして…」
「いやいや、軍師姫、私の方と仲良くしてくだされ!」
「お前は黙れ!
息が臭いぞ!」
「軍師姫様におかれましては…」
なんだ?
一体私の評判はどうなっているのだ???
狼狽えて、五歩ほど後退したところ、人だかりは追いかけるように押し寄せてくる。
圧迫され、潰れかけそうになったその時、ある1人の男性が私の腕を引き寄せ、人の輪から助けてくれた。
「皆の者、控えよ。
軍師姫が困っているだろう。」
そう言った男性は銀髪に薄紫の瞳をした、美青年であった。
はて、誰だろう?
しかし、その青年がそう言うと、私を取り囲んでいた人々は蜘蛛の巣が散るように去っていった。
「あ、ありがとうございます!」
「いいえ、ウチの貴族や商人達が失礼した。」
ウチの?
と言う事は…?
「私はベルベット国の第一王子、サイアです。
よろしくお見知り置きを、エティーナ姫。」
「これは、これは、王子様でいらっしゃったのですね。
失礼しました。」
「いいえ、失礼はこちらの方だったでしょう。
急に腕を掴んで申し訳ない。
しかし、あなたを救う為には…」
「いえ、わかっておりますゆえ。
ご心配なさらず。」
「やはり賢明な姫のようだ。」
「私に何かご用件がおありですか?」
私はなんとなくそう尋ねた。
「そこまで見抜かれていましたか…」
「と言うと?」
「実は、我が国には眠っているミスリル鉱山があるのです…
そこを掘ればかなりの確率でミスリルが出るはずなのですが…
何せミスリルの眠っている場所は深くて、とても少数の人の力では…」
「なるほど。
そこで、私の協力を仰ぎたい、と?」
「ご明察。」
「皇帝陛下に許可を取らなければなりませんが、それならば、ルードラの炭鉱員と土魔導師を派遣しましょう。」
「誠ですか!?」
「ただし、こちらにも条件がございます。
それを飲めれば、の話ですわ。
ミスリルが出た暁には、ミスリルの8%を我が国に献上する事。
いかがですか?」
「…仕方ありません。
飲みましょう、その条件!」
「では、皇帝陛下に話してみますゆえ、あちらに参りましょう。」
そうして、ベルベット国からは数日後にミスリルが採掘され、エドババーバにも8%のミスリルが流れることになった。
こうして、なんだかよく分からない式典は、相変わらず政の話で幕を閉じた。
その後、サイア王子とは文通友達となったのは、陛下にはなんとなく秘密だ。