【完結】皇帝陛下の軍師寵姫

20 裏切り

side皇帝・ファウル

俺はこの国を治める皇帝、ファウル=エドババーバ。
とはいえファウルと、俺を下の名で呼ぶ者など1人も居なかった。

いつか、エティーナと正式に夫婦になった暁には、彼女に''ファウル''と、そう呼んでほしい。
そんな淡い期待を抱いていたが、それはいつになる事やら…
確信も自信もなかった。

しかし、エティーナは俺が部屋を訪ねても嬉しそうに政の事など話すし、しばらくはそれで良いと、そう思っていた。

だが…

ベルベット国からの文がその日届いた。
王子サイア殿からのようだ。
正式な王族の紋章ま入っているし、くだらない内容では無さそうだ。

俺はその文を開いた。

すると…

エティーナを王太子妃として迎えたい、と要約すればそう書いてあった。
俺は頭に血が上った。
ベルベット国め…!
人が優しくしておれば図に乗りおって!
エティーナを王太子妃に迎えたい、だと!?

俺がエティーナにぞっこんなのを知ってよくそんな事が言えたものだ!

ベルベットとの平和条約を破棄するか?

そんな考えが頭をよぎった。

しかし、1人の姫君のことでそれはやりすぎだろう。
そう、思いとどまった。

だが…
俺にさらに追い討ちをかける事態が待っていたのだ。

国土大臣であるレガートが俺にこう言ったのだ。

「陛下…!
お耳に入れたい事がございます!」

「なんだ?
今の俺は機嫌が悪い。
逆撫でするような事では無かろうな?」

俺はレガートを軽く睨みつけつつそう言った。

「それが…
エティーナ様の事でございます。」

「…エティーナがどうした?」

「はい、先日…
ベルベット国の王都ベルベにて、エティーナ様とベルベット国の王子サイア様が会っているのを見た、という報告が複数上がっております。
これは…
いえ、エティーナ様を貶める意図はございませんが…
もしや、敵国へのスパイ活動を行っている可能性もございます…!」

俺はそれを聞いてカッとなった。
許せなかった。
裏切られた!
そう思ったのだ。

「エティーナをスパイ容疑で牢屋に入れよ!」

エティーナがスパイをしていると本気でそう思った訳では無かった。
ただ、彼女が他の男に心を許し、口付けでも交わしたかと思うと、俺の心は煮えたぎりそうだったのだ。

そして、それからすぐにエティーナはエドバ城の地下の牢屋に入れられた。

すぐに、イグナードや、ベルゼン、ラッセルらは、やりすぎだと俺を諫めた。
しかし、そんな言葉は俺には通用しなかった。

裏切られたんだ…

それだけが俺の心を支配していたのだ。
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