【完結】皇帝陛下の軍師寵姫

36 狩猟大会

エドバ城の裏山には低級のモンスターや野生の動物が出る。
危険はほぼ無いが、弓で狩れ、となると話はまた別である。

その日エドバ城の裏山で王族・貴族が集まっての大きな狩猟大会があったが、みんなの注目はもちろん、私・エティーナとミーシャ様である。
私は皇帝陛下からいただいた、珍しい銀馬に乗り、ミーシャ様は黒馬に乗っていた。

「えー、晴天にも恵まれた今日。
狩猟大会を行います。
それぞれの騎士や姫達には、紋章の入った矢と弓をお渡しています。
それが刺さったモンスター・動物がその者の獲物でございます。
決して剣などを使わず、弓にて勝負する事。
ルールはそれ一つにございます。

2時間後が終了でございます。
終了時にこのスタート地点に居なければ、失格とさせていただきますので、ご了承下さいませ。

なお、獲物は、小・中・大、にこちらで規定の通り分け、それに応じた点数をつけさせていただきます。
つまり、獲物の数が同じでも、大きさにより点数に差が出る場合がございます。
ご了承下さい。

それでは、質問などなければ始めさせていただきますが…」

シーンとする王族・貴族達。

「それでは、用意、始め!!!」

私たちは始まりの合図とともに馬を蹴り、山の中に走っていく。

山の深くになればなるほど、モンスターや動物と出会いやすいのだ。

赤たぬきかが現れた!
私は弓を引き絞り、狙いを定める。

射よっ!!!

一体目、赤たぬきを仕留めた。

しかし、もう8分が経過しようとしていた。
これでは、数でも大きさでもミーシャ姫に負けている。

♦︎♦︎♦︎

そして、2時間後。

私たちはスタート地点へ戻っていた。
ミーシャ様の馬の足元には化け狐や鴨、レッドウルフなどの獲物が大量に積み上げられている。

対して私は赤たぬき1匹を手に持っているだけである。

「ふふふ。
この勝負どうやら、私の勝ちでございますわね?」

ミーシャ様がそう言った時、私は口を開いた。

「私の獲物はあちらにまとめて置いてあります。
多くて持って来れなかったのです。」

私は山の中を指差した。

「そんな…!?
バカな…!?」

しかし、皆をその場に案内すると、矢に射られたたくさんの獲物が積み上がっていた。
ミーシャ様の1.5倍ほどはあるだろう。

イグナード様が矢尻の紋章を確認する。

「これは…!
エティーナ様の紋章に間違いございません!」

観衆からは大きな拍手と歓声が上がった。

ふぅ…
何とか誤魔化せたみたいね…

私は安堵し、狩猟大会は私の勝利で終わりを告げた。

実はこれにはカラクリがある…

私のスキルが戦炎、だと言う事を、みなさん覚えているだろうか?
そう、私はスキルを使いまくったのだ。
はっきり言って違反行為である。
弓など当たるはずもないのだ。
最初から諦めていた。

ただし、戦炎を大きく使うとすぐにスキルを使ったとバレてしまう。
よって、モンスターや動物の心臓を内側から爆破して、その死体に矢を刺していったのだ。

これが、私のインチキ勝ちの方法であった。

それゆえ、獲物の死体は全て食べると言って持って帰り、後宮の庭で焼却処分した。

数日後、ミーシャ様が来られた。

「エティーナ様…
どの様な手法かは分かりませんが、この間の勝ちはイカサマでございますね…?」

「…証拠はあるのですか?」

「いいえ、でも、あなたが弓で私に勝つ事は不可能ですから。
しかし、軍師姫たる頭の良さに感服したのも事実ですわ。
だから、咎めようとは思っていません。

皇帝陛下を、どうぞ、幸せにして差し上げてください…
私はシャルナーク国に出戻ろうと思います…

陛下よりも、私を、私だけを愛してくれる人を探すつもりですわ。

今回の事でようやく決心がつきましたの。
ありがとう…」

「ミーシャ様…」

私は自分を恥じ行った…

そして、ミーシャ様と握手を交わして、私たちはそれぞれの道を歩む事になったのだった…
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