【完結】皇帝陛下の軍師寵姫

55 戦の下準備

sideファウル

その日、俺は久しぶりにエティーナの部屋を訪れた。
最近は統括する領土も増えて本当に忙しかった。
それは、エティーナも同じであり、彼女も軍師姫として各地で活躍していた。

「あら、陛下。
お久しぶりにございます。」

エティーナは礼儀正しく一礼した。

「あぁ、エティーナ。
今日は軍師姫としてのそなたに用があるのだ。」

「…と申されますと?」

エティーナの目が鋭く光った気がした。

「ふむ。
あまり詳しくは作戦を言えないのだが、今回、ある部隊を新たに作って欲しいのだ。」

「ある部隊…?」

「そう、名付けて騎虎隊(きこたい)だ。」

「つまり、ジャイアントタイガーを使役して、騎虎隊を作れ、とそう言う訳ですね!?」

「まさに…
どうだ?
二、三週間以内に出来るか?」

「おまかせくださいませ!
勝利を陛下の手に…!」

「あぁ、頼んだ。
では、俺は今からセンティスに出かけてくる。」

「センティスに、でございますか…?
まだ、戦闘中の国ではございませんか?」

「あぁ、だからこそ意味があるのだ。」

俺は言い、エティーナの部屋を後にした。

♦︎♦︎♦︎

次の日、馬車はセンティスのセント・フォース侯爵家の城についた。
俺たちは目立たぬやうに裏口から入っていく。

「私にご用件とは何事でしょうか?
敵将の城へ入るならば、それなりのご覚悟がおありなのでしょうね?」

「茶を濁しても仕方ないので、単刀直入に言おう。
センティス王家を裏切って、我がエドババーバ国に付かぬか?」

「なっ!?
私にセンティス王家を裏切れと申しますか!?」

「2度も言いたく無い。
セント・フォース侯爵、あなたの手腕は高く評価している。
もしも、センティスを平定した際にはその功績に応じて今の2倍の領地を保証しよう。」

「しかし…」

「はっきり言って、センティスと我がエドババーバ軍では、こちらの方が有利だ。
何をそんなに考える必要がある?
あなたのような有能な将にたったこれだけの土地しか与えないセンティス王家に義理立てする必要があろうか?」

俺は畳み掛ける。

「わ、わ、分かりました…」

そうして、俺はセンティスの有名な将を取り込んで行った。

今回の作戦において、これは非常に重要な策だった。

そして、帰国した頃には騎虎隊が出来上がっていた。

「エティーナ。
いや、軍師姫よ。
よくやった。
これで準備は万端だ。
あとは勝ちに行くだけだな。」

俺は不敵に笑いそう言った。

「陛下の力を信じております。」

エティーナはそう言い微笑む。

さぁ、いざ戦いの始まりだ。
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