【完結】皇帝陛下の軍師寵姫

72 勇気を出して

sideファウル

その日俺は決意していた。
それは、エティーナと熱い初夜を迎えるということだ。

エティーナは今日も寝室で俺の訪れを待っている。

えぇい、俺も男だ!
やってやろうじゃないか!

俺はエティーナの部屋に足を踏み入れた。

「エ、エ、エティーナ…
今日は星が綺麗だな…」

俺は辿々しく言う。

「はぁ?
今日は雨ゆえ星の一つも出ておりませぬが?」

エティーナにそう冷静に返されて少しかちんとくる。

「えぇい!
そなたには情緒が無いのか!?」

「じょ、情緒ともうされましても、星が無いのに、綺麗!とは申し上げられませぬ!」

もっともな意見だ。
だが、そうじゃ無いんだ、エティーナよ。
察してくれよ…

「そ、そ、そろそろ、寝らぬか?」

「えぇ。
今日もルードラの街に行ったり来たりで疲れましたわ。」

「きょ、きょ、今日は寝かせぬ!」

「はぁ?
寝ようと言ったり、寝かせぬと言ったり、どうかされたのですか?」

「お、お、俺はだな…
言うぞっ!?」

「ど、ど、どうぞ?」

「そ、そ、そなたを抱きたいのだっ!」

「きゅ、急にそのようなことッ!」

「えぇい!
では、いつならば良いのだ!?
抱く時に最適のタイミングなどありはしないだろう!

俺は今そなたを抱きたいのだ!」

「…………。」

「…嫌なのか?」

「いいえ、嫌ではございません…」

「誠か!?」

俺はすぐに彼女を抱きしめた。

すると…

「ん?
熱い…」

「少しは熱くもなりましょう?」

エティーナは照れながらそう言うが、そうでは無いのだ。

熱がある…

「そなた熱があるぞ?」

「え!?
そういえば…
今日何となくだるいと…」

「はぁぁぁあ…
俺がそなたを抱ける日はいつ来るのであろうな?」

俺はため息混じりにそう呟き、エティーナをベッドに運んだ。

「きょ、今日で構いませんわ!」

「ダメだ。
風邪の女子を抱けぬ。」

そうして、俺はエティーナをただ抱きしめて彼女の寝顔を見ながら眠った。
< 72 / 80 >

この作品をシェア

pagetop