最強魔導士様に嫁ぎました

16 困った奥様だ

sideロロドロア

そう尋ねる彼女の顔はキラキラしていた。
まるで、新しい物に興味津々な子猫のような瞳だった。

困った奥様だな…

俺は心の中で苦笑いした。

だけど、そんな彼女を見ているのは嫌いではなかった。
今までにダンジョンでデートした女性など居ただろうか?いや、居ない。

戦いというと、野蛮だと思われるか、自分を守ってくれると思うお姫様か。
そのどちらかだった。

シェリエはどちらにも分類されない。
自ら剣を持ちモンスターを退治していく様は、まさに爽快で、戦姫というに相応しかった。

変な女…

「どうもダンジョンで誘拐されるらしい。」

俺はまだ魔導士団しか知らないだろう事件の概要を、戦い好きな奥様に説明した。

「まぁ!
それで、2、3日して戻ってきてからの様子は?」

「至って普通さ。
何の外傷も無いし、意識もはっきりしている。
だが、その誘拐された期間の記憶は無いらしい。」

俺は魔蝶を氷で貫きながら説明した。

「………」

シェリエは何やら考え込んでいる。

「どうしたんだ?」

「何か、おそらくですけど、囚われた冒険者には、何か共通点があるはずですわ。」

「共通点…?」

彼女が頭脳明晰と呼ばれる所以もわかる気がする。

しかし、共通点など思いもつかない。
男、女共に冒険者である者は攫われているし、強いて言うならば、"ダンジョンで"というところか?

俺たちはそんな色気もクソも無い話をしながら、冒険者が攫われた地点に到着した。

「特に変わったところは無いようですわね…」

「いや、これは…!」

俺は空中を剣先で指し示した。

「転移魔法の痕跡ね…!?」

彼女にも見えるようだ。
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