バッカスの女神様はオトコを知らない
バッカスの女神様はオトコを知らない  

<デラシア・ローズベリー>

リーンゴーン、リーンゴーン

見上げた空はどこまでも青く、教会の鐘の音が吸い込まれるように響き合う。

連なる山の新緑が萌えるようで、まぶしさすら感じる。

そのふもとに、小さな女子修道院がある。

良い天気だ。

灰色のベールをつけて、ジャンパースカート姿の修道女が一人、

重そうな木箱を足元の石畳におくと、ハーブ畑の脇にあるベンチに座り、ふぃーーと息を吐いた。

シスター・デラシア・ローズベリー。

まだ誓願を立てていないので志願者だが、キャリアはこの修道院で一番長い。

何しろ彼女は生まれた時から、この修道院にいるのだから。

修道院の秘密の抜け道も熟知していたし、今は薬草リキュールのレシピ管理と、製造責任者を兼ねている。

まったく、修道院長は人使いが荒い。
< 1 / 74 >

この作品をシェア

pagetop