バッカスの女神様はオトコを知らない
<実業家ダニエルとの出会い>
その実業家の事務所は、海沿いのレンガ倉庫の隣、大きな建物にあるという。
「もう少しで着きます」
白髪の弁護士、院長の知り合いだが、後ろをチラッと振り向いた。
後部座席には、デラシアと院長が窮屈そうに座っている。
その弁護士は声をひそめるように言った。
「その、今日会うレガート氏は、評判が色々あるようで」
レガート氏とは・・・酒の卸から製造まで手広く商売をしている人らしい。
「弁護士仲間から聞いたのですが、裏社会とつながりがあったという噂もあります。
なんでも密造酒を作って売りさばき、警察に捕まったこともあると聞きました」
「犯罪者・・・なのですか?!」
院長がバックの持ち手を強く握りしめて、叫んだ。