バッカスの女神様はオトコを知らない
「修道院としては、そのような方とお付き合いするのは、遺憾です・・・」

デラシアは、すぐ横の院長の顔を盗み見た。

青い顔でハンカチを口に当て、すでにビビっていることがわかる。

「もちろん、それは過去の話です。
今はきちんと税金も納め、クリーンな経営者でしょう。」

どこか不安そうな声であったが、弁護士はそのままハンドルを切った。

車は、両脇に大きな倉庫が立ち並ぶ道を、ゆっくりと進む。

院長は少し落ち着きを取り戻したのか、

「薬草リキュールは修道院の大切なお薬なので、ローズベリーが品室管理をしないと困りますね」

「そうなると共同経営という形がよいと思います。
でも、相手がどんな条件を出すのかわからないので、今日は顔見世、挨拶だけということにしましょう」

そう言って、弁護士は車を波止場近くの駐車場に止めた。
< 11 / 74 >

この作品をシェア

pagetop