バッカスの女神様はオトコを知らない
「あの、でも・・」

弁護士が声をかけたが、ダニエルは全く無視をして続けた。

「契約ですが、修道院のブランド、製造法、レシピ、すべて一括で買い取ります」

「マークス!」

呼ばれた若い秘書は、すぐに机の上にたくさんの書類を並べた。

「特許と商標はこちらで取ります。
ラベルも古い伝統を感じさせ、美しいですし、エレガントだ」

ダニエルは満足げに、薬草リキュールの瓶を手に取った。

一方的に話しを進めようとするダニエルに、弁護士が恐る恐る切り出した。

「レガートさん、修道院と共同経営をするという提案で、私どもは来たのですが」

ダニエルの額に、くっと不満のしわがよった。

「はっ?あんな狭い、しかも設備の古い所で量産できっこないでしょう。
私はこの薬草リキュールを、世界規模のブランドにするつもりなんですよ」

ダニエルは、獲物を追い詰め仕留める獣のようにアドレナリンが満開だ。
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